Beyond the Evidence
1年前
「Beyond the Evidence」 では、 消化器専門医として判断に迷うことの多い臨床課題を深掘りし、 さまざまなエビデンスや経験を基に、 より最適な解決策を探求することを目指す企画です。 気鋭の専門家による充実した解説、 是非参考としてください。
切除可能な局所進行食道扁平上皮癌に術前DCF療法や術前FLOT療法といった3剤併用療法を行う場合、 どのような有害事象の発現に注意すべきか?
術前DCF (ドセタキセル、 シスプラチン、 5-FU) 療法では、 好中球減少を代表とする血球減少や発熱性好中球減少、 食欲不振の頻度が高く、 術前FLOT (5-FU+オキサリプラチン+ドセタキセル) 療法では好中球減少や感染の頻度が高く、 それぞれに応じた適切な支持療法を行う必要がある。
切除可能な局所進行食道扁平上皮癌に対する標準治療は、 JCOG1109試験の結果から、 術前DCF療法と手術として確立された¹⁾。
術前DCF療法は、 病理学的完全奏効割合が18.6%と非常に治療効果の高いレジメンではあるが、 約15%の症例が術前治療を途中中止となっており、 最多の理由が有害事象と報告されている¹⁾。 そのため、 術前DCF療法における有害事象管理は非常に重要であり、 特に頻度の高い好中球減少や発熱性好中球減少、 食欲不振の管理はカギとなってくる。
まず好中球減少や発熱性好中球減少に関しては、 以前の過去の臨床試験結果を鑑み、 安全性試験の段階からday5-15のキノロン系薬剤内服が規定されていた。 その結果、 安全性試験の段階では発熱性好中球減少は2.4%と抑制されていたが²⁾、 JCOG1109試験の段階では、 発熱性好中球減少の頻度が16%と報告された¹⁾。
本邦のガイドラインでは、 発熱性好中球減少のリスクを有する場合に顆粒球コロニー形成刺激因子 (G-CSF) の一次予防がエビデンスレベルCで推奨されている。 しかし最適なG-CSF投与のタイミングに関しては不明な点があったことから、 本邦では複数の第Ⅱ相試験でG-CSFの投与タイミングが検討されている³⁾⁴⁾。
次に食欲不振に関しては、 術前DCF療法ではシスプラチンを用いる事から、 従来の標準的な制吐療法としては、 NK₁受容体拮抗薬、 5-HT₃そのような中、 J-FORCE試験の結果⁵⁾から、 オランザピンが制吐療法としての有効性を証明したことから、 先日パブリックコメントを募集していた新しいガイドライン案では、 オランザピンを加えた4剤併用療法を推奨している。 ただオランザピンは血糖上昇作用があることから、 糖尿病を有する症例には適さない点に注意が必要である。
術前FLOT療法は術前DCF療法と異なり、 オキサリプラチンを用いる3剤併用療法であることから、 大量補液が不要で、 PS不良や腎機能障害、 心機能障害等の症例でも投与を検討しうるレジメンである⁶⁾。 そのため、 術前FLOT療法は、 現在食道癌に対しても治療開発が進められている。
術前FLOT療法では、 発熱性好中球減少は2%と頻度は低いが、 grade3以上の好中球減少が51%、 感染が18%と報告されており⁶⁾、 好中球減少に起因する有害事象の管理は重要である。 そのためG-CSFを含めた適切な支持療法により、 dose intensityを保つ必要があると考える。
HOKUTOユーザーの医師129名に聞きました
アンケート結果:NK₁受容体拮抗薬+5-HT₃受容体拮抗薬+DEXの「3剤併用療法」が最多で、 次点はオランザピンを含む「4剤併用療法」となりました。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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