HOKUTO編集部
2日前

欧州呼吸器学会 (ERS 2026) が、 9月5~9日にスペイン・バルセロナで開催される。 今回は5本のガイドラインが新たに発表され、 臨床試験の速報枠であるALERTには2セッションが設けられた。 本稿では、 発表される5ガイドラインと、 Late Breaking AbstractおよびALERT枠に採択された演題のうち、 第Ⅲ相試験・承認後データ・実診療レベルの無作為化比較試験に絞って編集部が選んだ8題を、 開幕に先立って予告する。
今回のERSでは、 ERS単独のガイドライン2本に加え、 内視鏡・放射線・胸部外科など他学会との合同ガイドラインが3本発表される。 いずれも独立したGuidelines sessionで発表される。
肺癌の診断と病期診断における気管支腔内・食道腔内超音波の使い方を示す合同ガイドラインである。 欧州呼吸器学会に加え、 欧州消化器内視鏡学会 (ESGE) ・欧州胸部外科学会 (ESTS) が策定に加わった。 セッションでは方法論と改訂点が解説される。
特発性肺線維症 (IPF) と肺癌を併存する患者の管理を扱う新規ガイドラインである。 早期肺癌のスクリーニングと治療、 進行肺癌の治療方針が個別に取り上げられる。 併存例では抗癌治療が急性増悪の契機となり得るため、 予防戦略の標準化がどこまで踏み込まれるかが焦点となる。
欧州睡眠学会 (ESRS) との合同で策定された、 成人閉塞性睡眠時無呼吸に対するCPAP療法の新規ガイドラインである。 患者集団ごとのCPAPのエビデンスが整理され、 エビデンスギャップと今後の課題も示される。
低線量CT肺癌検診で陽性所見が出た場合の精査経路を示すガイドラインである。 呼吸器・放射線・胸部画像・放射線腫瘍・胸部外科の5学会と欧州肺財団 (ELF) の6団体が合同で策定し、 GRADE法に基づく。 医師ではなく患者を名宛人とする点が新しい。
肺動脈性肺高血圧症 (PAH) の治療に関する新規ガイドラインである。 薬物療法の新推奨と、 フォローアップ時の侵襲的血行動態評価の新推奨が、 それぞれ独立した講演で解説される。
吸入維持療法下でも増悪を繰り返すCOPD患者2,306例を対象に、 抗IL-33抗体tozorakimabの増悪抑制効果を検証した2件の第Ⅲ相試験である。 血中好酸球数と喫煙状況を問わず登録された点が特徴で、 既喫煙者を主要解析集団としている。 国内でCOPDに承認されている生物学的製剤は好酸球高値が前提となるため、 対象患者の線引きが変わり得る試験である。 学会が速報枠 ALERT 2 の冒頭に配置した演題である。
重症COPD患者を対象に、 血中好酸球数に基づいて吸入ステロイドの使用を調整する戦略を検証したデンマークの無作為化比較試験である。 吸入ステロイドの適正使用は肺炎リスクとの兼ね合いで長く議論されており、 バイオマーカーによる層別化が実診療で機能するかが問われる。
心血管疾患を合併しないCOPD患者を対象に、 β1選択的遮断薬メトプロロールの投与を検証したスウェーデンの無作為化比較試験である。 COPDにおけるβ遮断薬は気道への影響を懸念する立場と予後改善を期待する立場が対立してきた。 心血管疾患のない集団に絞った結果が示される。
英国のプライマリ・ケアを対象に、 喘息の自己管理支援を診療の仕組みとして定着させる戦略を検証したクラスター無作為化比較試験である。 アクションプランの共有や吸入手技の確認といった自己管理支援は各国のガイドラインが一貫して推奨しながら、 日常診療に根づかせることが難しい領域として知られる。 個々の薬剤ではなく 「どう実装するか」 を主要評価に据えた点が特徴で、 会期中には過程評価と医療経済評価の報告も予定されている。
PDE4B阻害薬ネランドミラストの長期継続投与試験における安全性・忍容性の報告である。 本剤は2026年5月に国内でもIPFと進行性肺線維症を適応として承認されており、 議論の軸は有効性の証明から長期の使い方へ移る。 日本人研究者も著者に名を連ねる。
新規に診断されたMycobacterium avium complex (MAC) 肺症を対象とした第Ⅲb相ENCORE試験から、 菌の陰性化と再発に関する成績が報告される。 試験の主要成績は2026年の米国胸部学会 (ATS) で発表済みで、 本演題はその微生物学的アウトカムを掘り下げた解析にあたる。 国内では難治性MAC肺症にアミカシンリポソーム吸入液が承認されているが、 本試験は新規診断例が対象であり、 使いどころが前倒しになるかどうかが焦点となる。 日本は非結核性抗酸菌症の有病率が高く、 実診療への距離が近い一本である。
低酸素血症を伴い入院した肺炎患者を対象に、 吸入ブデソニドとホルモテロールの併用を検証した無作為化比較試験である。 急性肺傷害への進展抑制を狙う介入で、 既存の吸入薬による転帰改善の可能性が問われる。 ALERT枠に加え、 9月6日のARDSセッションでも取り上げられる。
末梢肺結節の診断を対象に、 光ファイバーでカテーテルの形状と三次元的位置を検出するshape-sensing方式のロボット支援気管支鏡と電磁ナビゲーション気管支鏡を直接比較した多施設無作為化比較試験である。 中国からの報告で、 診断能と安全性が比較される。 ロボット支援気管支鏡の国内導入を検討するうえでの比較データとなる。
今回のERSでは、 肺癌の気管支腔内超音波・IPF合併肺癌・成人OSAのCPAP・肺癌検診・PAH治療の5本のガイドラインが発表される。 HOKUTOではこれらのガイドラインの紹介と注目演題を順次レポートする。
ERS 2026における注目演題は、亀田総合病院呼吸器内科・部長代理の舟木佳弘先生にご解説いただく予定です。

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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