海外ジャーナルクラブ
1年前
Ramosらは、 新たに1型糖尿病と診断された患児を対象に、 抗CD3モノクローナル抗体teplizumabの効果について第Ⅲ層プラセボ対照二重盲検無作為化比較試験PROTECTを用いて検討した。 その結果、 teplizumab群はプラセボ群と比べ食事負荷試験後のCペプチド値が有意に高く、 β細胞機能 (インスリン産生能) の維持に有効である可能性が示唆された。 本研究は、 NEJM誌において発表された。
2:1割り付けは数学的に有意差が出にくくなる傾向にあるので、 4つの副次評価項目で有意差がなかったのは仕方ない、 と言えます。
T細胞上のCD3に対するヒト化モノクローナル抗体であるteplizumabは、 8歳以上のpreclinical (ステージ2) の1型糖尿病患者の発症遅延 (ステージ3への進行抑制) を適応として米食品医薬品局 (FDA) により承認されている。 しかし、 既に発症したステージ3の1型糖尿病患者に対する疾患の進行をteplizumabで抑制できるかどうかは不明である。
新たに診断された1型糖尿病 (ステージ3) の患者 (8~17歳)
患者を以下の群に2 : 1の割合で無作為に割り付けた。
ベースラインと比べた78週時点のCペプチド変化量
78週時点のインスリン用量、 目標血糖値の範囲内を維持できている時間、 HbA1cの変化量、 臨床的に重大な低血糖イベントの発生率
主要評価項目
teplizumab群はプラセボ群に比べ78週時点の食事負荷試験後のCペプチド値が有意に高かった。
臨床的に意味のあるピークCペプチド値 (0.2pmol/mL以上) を維持した患者の割合
最小二乗平均値の差 : 0.13pmol/mL、 95%CI 0.09-0.17、 p<0.001
副次評価項目
4つの副次評価項目においては、 いずれも両群で有意な差は見られなかった。
有害事象
両群において、 頭痛、 消化器症状、 皮疹、 リンパ球減少症、 サイトカイン放出症候群などが発生したが、 大半が軽症~中等症で管理可能であった。
teplizumabを用いた治療により、新規に診断された1型糖尿病患児のβ細胞機能が維持される可能性が示された。 副次評価項目では有意差が確認されなかったが、 これは統計学的検出力が不足していたことが一因と考えられる。 また、 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大の影響により試験の実施方法が複雑となったこと、 試験参加者の大半が白人であったことなどが研究の限界である。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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