海外ジャーナルクラブ
2ヶ月前
Ullmanらは、 オーストラリアの3つの病院で末梢挿入型中心静脈カテーテル (PICC) を留置する患者を対象として、 新たなカテーテル材料 (疎水性PICCおよびクロルヘキシジンPICC) における感染症や血栓、 カテーテル閉塞などの合併症によるデバイス不全のリスクを、 従来の標準ポリウレタンPICCと比較した無作為化試験で検討した。 その結果、 新たなカテーテル材料によるデバイス不全のリスク低減は認められなかった。 本研究は、 NEJM誌にて発表された。
新しいデバイスの有効性を評価したRCTですが,企業グラントではなくオーストラリア国の公式研究費で行われています。
PICCに用いられる新しいカテーテル材料は、 デバイス不全を軽減する可能性がある。 しかし、 従来の材料と比較したランダム化試験のデータは不足している。
本研究では、 疎水性PICCおよびクロルヘキシジンPICCが、 標準ポリウレタンPICCと比較して、 感染症や血栓、 カテーテル閉塞などの合併症によるデバイス不全のリスクを低減するかを無作為化試験で検討した。
オーストラリアの3つの病院で、 PICCを留置する成人・小児患者1,098例が以下の3群に1 : 1 : 1で無作為に割り付けられ、 8週間追跡された。
- 疎水性PICC群 (疎水性群) : 365例
- クロルヘキシジンPICC群 (クロルヘキシジン群) : 365例
- 標準ポリウレタンPICC群 (標準ポリウレタン群) : 368例
主要評価項目は感染性合併症 (血流または局所) または非感染性合併症 (血栓症、 破損、 閉塞) の複合によるデバイス不全の発生であった。
主要評価項目であるデバイス不全の発生状況は以下の通りであった。
発生割合
- 疎水性群 : 5.9% (21/358例)
- クロルヘキシジン群 : 9.9% (36/363例)
- 標準ポリウレタン群 : 6.1% (22/359例)
リスク差 (RD)
- 疎水性群 vs 標準ポリウレタン群 :
-0.2%㌽ (95%CI -3.7-3.2%㌽、 p=0.89)
- クロルヘキシジン群 vs 標準ポリウレタン群 :
3.8%㌽ (95%CI -0.1-7.8%㌽、 p=0.06)
オッズ比 (OR)
- 疎水性群 vs 標準ポリウレタン群 :
0.96 (95%CI 0.51-1.78)
- クロルヘキシジン群 vs 標準ポリウレタン群 :
1.71 (95%CI 0.98-2.99)
全原因による合併症の発現状況は以下の通りであった。
発現割合
- 疎水性群 : 21.5% (77/358例)
- クロルヘキシジン群 : 38.6% (140/363例)
- 標準ポリウレタン群 : 21.7% (78/359例)
OR
- 疎水性群 vs 標準ポリウレタン群 :
0.99 (95%CI 0.69-1.42)
- クロルヘキシジン群 vs 標準ポリウレタン群 :
2.35 (95%CI 1.68-3.29)
最も頻度の高い合併症は、 カテーテル閉塞であった。 疎水性群の17.0%、 クロルヘキシジン群の33.6%、 標準ポリウレタン群の14.2%で発現した。
有害事象は疎水性群で12例 (3.4%)、 クロルヘキシジン群で4例 (1.1%)、 標準ポリウレタン 群で7例 (1.9%) に発現し、 いずれもPICCとは無関係と判断された。
著者らは 「本試験において、 新たなカテーテル材料によるデバイス不全のリスク低減は認められなかった。 また、 クロルヘキシジンPICCでは、 標準ポリウレタンPICCと比較して全原因による合併症が多く認められた」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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