HOKUTO編集部
2ヶ月前
広島大学病院 脳神経内科の音成 秀一郎先生による連載 「けいれん診療ガイド」 です。 第7回は"C-NORSEの特徴と治療" について解説いただきます。
てんかんの既往がない患者が発熱を契機に薬剤抵抗性のてんかん重積状態に至る症候群をNORSE (new-onset refractory status epilepticus) と呼びます。
このNORSEの原因としては自己免疫性や傍腫瘍性の病態があるのですが、 時に原因が明確でないものがあり、 それをCryptogenic NORSE (C-NORSE) と呼びます。
このC-NORSEもまたヘテロな集団ではありますが、 時にその発作は極めて薬剤抵抗性を示し、 抗てんかん発作薬だけでのコントロールは困難です。 そのため近年ではC-NORSEに対しては抗てんかん発作薬を過不足なく投与しつつも、 強力な免疫治療の早期の導入が必要と考えられています¹⁾。
C-NORSEではいかに早期に強固な免疫治療が導入できるかが一つのポイントなのですが、 そもそも除外診断で成り立つ概念であるため、 超急性期での診断がなかなか難しいというジレンマがあります。 そこで活用できるのがC-NORSEスコアです。
C-NORSEスコアは以下6つの臨床特徴に基づき、 各項目を1点として計算されます²⁾。
このうち、 ①と②は必須条件とされ、 合計で5点以上を満たす場合はC-NORSEの可能性が高いと判断されます。
内訳を見ればわかるのですが、 1と2はNORSEの必要条件です。 4や5は抗NMDA受容体脳炎などへの除外診断に対応した項目で、 6のMRI所見としては左右対称性に辺縁系や、 前障 (claustrum) に信号変化を呈する特徴があります。 脳炎では初回のMRIでは明らかな異常を認めないこともあるので、 治療抵抗性の場合には再検する必要があるでしょう。
C-NORSEの可能性があれば免疫治療を検討します。 まずはステロイドパルスや免疫グロブリン大量療法などが用いられますが、 これらは原則無効です。 なぜならC-NORSEでは細胞表面抗原に対する抗体が陰性だからであり、 そのため血液浄化療法も効果がありません。
ただし、 実臨床ではこれらの神経抗体が陰性であることを確認するのに時間を要しますので、 結局はステロイドパルスから始めるしかないという現状があります。
その過程でC-NORSEの可能性が濃厚になれば免疫治療を強化していくことになります。 近年ではシクロフォスファミド、 リツキシマブ、 あるいはトシリズマブなどの有効性に期待が持たれています。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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