著者

HOKUTO編集部

13日前

【最終回】貧血マネジメント 「正球性貧血」 (聖路加 藤野先生)

>> これまでの貧血に関する連載を確認する

正球性貧血は難しい

『全ての貧血が正球性貧血となり得る』

  • 出血、溶血性貧血や鉄欠乏性貧血、慢性疾患に伴う貧血も最初は正球性となる。
  • 巨赤芽球性貧血も最初はMCV 90~100fL程度の正球性なことをしばしば経験する。
  • 小球性+大球性というような複数の病態が重なる場合も結果として正球性となる。
このように、 鑑別も多彩で判断に悩むことも多い正球性貧血だが、 本稿では非専門医でも知っておいてほしいアプローチ法と、 代表的な正球性貧血である腎性貧血を解説する。

正球性貧血のアプローチ法

病態と鑑別疾患

赤血球分布幅 (RDW)

要は 「赤血球の大きさのばらつき」を利用

RBC Distribution Widthの略で、 血算を評価する際に自動計算される数値。 おおざっぱに表現すると「赤血球の大きさのばらつき」を表している。 高値であれば、 赤血球の大きさにばらつきがあるということになり、 複数の病態が重なっている可能性が高くなる。

病態と鑑別疾患を頭に入れつつRDWなどの情報を加味して精査を進める。 大事なのは正球性貧血は何でもあり、 ということを忘れないこと。 以降、腎性貧血について解説する。

腎性貧血の疫学

病態

腎性貧血は、 腎機能低下によるエリスロポエチン(EPO)産生低下と赤血球寿命の短縮による貧血である。

原因疾患、 民族差

腎機能が悪くなるほど貧血の有病率は上昇し、 eGFRが30mL/minを下回ると50%以上の患者がHb<12g/dLとなる。 その他にも腎障害の原因疾患が糖尿病であること、 女性、 人種(コーカソイドよりもアフリカ系アメリカ人、 ヒスパニック、 アジア人のほうがリスクが高い)などが関連する¹⁾²⁾。

鉄欠乏性貧血と慢性疾患に伴う貧血(ACD)との合併

狭義の腎性貧血ではないが腎性貧血にはしばしば鉄欠乏性貧血と慢性疾患に伴う貧血(ACD)が合併する。

CKD患者における特徴

CKD患者ではヘプシジンが増加することが知られている³⁾⁴⁾。 ヘプシジンは肝臓で産生され、 鉄のトランスポーターであるフェロポーチンを調整し腸管からの鉄吸収と、 マクロファージ、 肝臓、 脾臓などの網内系からの鉄利用を低下させる。 よってCKD患者ではACDが合併していると考えたほうがよく、 一般的な鉄欠乏性貧血のフェリチンとTSATの閾値は使用しない (次項)。

腎性貧血の診断

年齢別のHb値

以下のHb値と腎性貧血(=EPO産生低下+赤血球寿命短縮)以外の原因除外で診断される⁵⁾。

EPO濃度

血中EPO濃度は腎性貧血の診断補助になる。

Hb<10g/dLで、 EPO<50mIU/mLの場合、 腎臓でのEPO産生が低下していると考えてよい⁵⁾。

EPO>50mIU/mLの場合、 貧血の他の原因を検索したほうが良い。

鉄欠乏性貧血が合併していないか評価

鉄欠乏性貧血の合併は、 腎性貧血の診断時は勿論だが、 診断して治療を開始した後も合併していないか評価を続ける必要がある。

CKD患者の鉄欠乏性貧血診断基準

CKD患者の鉄欠乏性貧血の診断基準 (=鉄補充の適応) は非CKD患者と異なる。 赤血球造血刺激因子製剤 (ESA: erythropoiesis stimulating agent) の導入前後でも異なる。 以下の数値を参考に個々の症例の病態も加味して検討する⁵⁾。

💡ESA治療前 フェリチン<50

💡ESA治療下 フェリチン<100かつTSAT<20%

腎性貧血の治療

ESA製剤

腎性貧血の治療はESA製剤の投与である。 具体的な使用法や用量調整は添付文書や他の記事を参照されたい。

目標Hb濃度と治療開始基準⁵⁾

ESA製剤の副作用

以下は特に重大であるため覚えておきたい。

HIF-PH (低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素) 阻害薬

2019年に世界に先駆けて日本で保険承認された新しい機序の腎性貧血治療薬であり、 既に5薬剤が承認されている。 詳細は他記事に譲るが、 適切な使用方法、 副作用への対策を日本腎臓学会が策定する「HIF-PH 阻害薬の適正使用に関するrecommendation」などや添付文書を参考に学んでおきたい。

鉄補充療法

上記の鉄補充の基準を満たす場合は鉄補充療法を行う。

保存期CKDや腹膜透析患者は内服療法を第1に考えるのが良い。 HD患者と異なり静注療法のアクセス確保が難しく、 経口療法の方が静注療法よりもHbが有意に改善されたというSystematic reviewもある¹⁴⁾。

HD患者では、 静注アクセス確保が容易であるため週1回または2週に1回 含糖酸化鉄(フェジン®)40mgを投与する。 13回の投与(約3~4か月)を1サイクルとしてフェリチン値を評価して継続の可否を検討する⁵⁾。

HD患者でも経口鉄剤が無効であるわけではないので、 経口薬で治療してもよい。 投与方法は非CKD患者の鉄欠乏性貧血と同様でよいが、 ヘプシジン濃度の上昇によって吸収効率が低下している可能性もあるので100mg/日程度まで増量することも検討する。

Take home messages

  1. 正球性貧血の鑑別は多彩で難しい!
  2. RDWも参考に、 鑑別疾患を念頭に精査!
  3. 腎性貧血の診断と、 合併する鉄欠乏性貧血をマスター!

前回のコンテンツ >>もっと見る

 >> 詳細はこちらの記事を参照下さい

 >> 詳細はこちらの記事を参照下さい

 >> 詳細はこちらの記事を参照下さい

 >> 詳細はこちらの記事を参照下さい

 >> 詳細はこちらの記事を参照下さい

参考文献

  1. The prevalence of anemia in patients with chronic kidney disease.Curr Med Res Opin. 2004 Sep;20(9):1501-10.PMID: 15383200
  2. Association of kidney function with anemia: the Third National Health and Nutrition Examination Survey (1988-1994).Arch Intern Med. 2002 Jun 24;162(12):1401-8. PMID: 12076240
  3. Immunoassay for human serum hepcidin.Blood. 2008 Nov 15;112(10):4292-7.PMID: 18689548
  4. Molecular mechanisms of hepcidin regulation: implications for the anemia of CKD.Am J Kidney Dis. 2010 Apr;55(4):726-41.PMID: 20189278
  5. 日本透析医学会. 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン2015年版.
  6. Normalization of hemoglobin level in patients with chronic kidney disease and anemia.N Engl J Med. 2006 Nov 16;355(20):2071-84.PMID: 17108342
  7. Correction of anemia with epoetin alfa in chronic kidney disease.N Engl J Med. 2006 Nov 16;355(20):2085-98.PMID: 17108343
  8. Meta-analysis: erythropoiesis-stimulating agents in patients with chronic kidney disease.Ann Intern Med. 2010 Jul 6;153(1):23-33.PMID: 20439566
  9. Pure red-cell aplasia and antierythropoietin antibodies in patients treated with recombinant erythropoietin.N Engl J Med. 2002 Feb 14;346(7):469-75. doi: 10.1056/NEJMoa011931.PMID: 11844847
  10. Antibody-mediated acquired pure red cell aplasia (PRCA) after treatment with darbepoetin.Nephrol Dial Transplant. 2007 May;22(5):1462-4.PMID: 17314208
  11. Erythropoietin use in CKD patients with cancer: to tread with caution? J Nephrol. 2013 Sep-Oct;26(5):829-35. PMID: 24052463
  12. Treatment with erythropoiesis-stimulating agents in chronic kidney disease patients with cancer.Kidney Int. 2014 Jul;86(1):34-9.PMID: 24402094
  13. American Society of Clinical Oncology/American Society of Hematology clinical practice guideline update on the use of epoetin and darbepoetin in adult patients with cancer. J Clin Oncol. 2010 Nov 20;28(33):4996-5010.PMID: 20975064
  14. Intravenous versus oral iron for treatment of iron deficiency in non-hemodialysis-dependent patients with chronic kidney disease. Am J Health Syst Pharm. 2012 Jul 15;69(14):1206-11. PMID: 22761074
こちらの記事の監修医師
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
QRコードから
アプリを
ダウンロード!
HOKUTOのロゴ
HOKUTOのロゴ
今すぐ無料ダウンロード!
様々な分野の医師
様々な分野の医師

あなたは医師もしくは医療関係者ですか?

HOKUTOへようこそ。当サイトでは、医師の方を対象に株式会社HOKUTOの臨床支援コンテンツを提供しています。