HOKUTO編集部
2年前
このように、 鑑別も多彩で判断に悩むことも多い正球性貧血だが、 本稿では非専門医でも知っておいてほしいアプローチ法と、 代表的な正球性貧血である腎性貧血を解説する。
要は 「赤血球の大きさのばらつき」を利用
RBC Distribution Widthの略で、 血算を評価する際に自動計算される数値。 おおざっぱに表現すると「赤血球の大きさのばらつき」を表している。 高値であれば、 赤血球の大きさにばらつきがあるということになり、 複数の病態が重なっている可能性が高くなる。
病態と鑑別疾患を頭に入れつつRDWなどの情報を加味して精査を進める。 大事なのは正球性貧血は何でもあり、 ということを忘れないこと。 以降、腎性貧血について解説する。
腎性貧血は、 腎機能低下によるエリスロポエチン(EPO)産生低下と赤血球寿命の短縮による貧血である。
腎機能が悪くなるほど貧血の有病率は上昇し、 eGFRが30mL/minを下回ると50%以上の患者がHb<12g/dLとなる。 その他にも腎障害の原因疾患が糖尿病であること、 女性、 人種(コーカソイドよりもアフリカ系アメリカ人、 ヒスパニック、 アジア人のほうがリスクが高い)などが関連する¹⁾²⁾。
狭義の腎性貧血ではないが腎性貧血にはしばしば鉄欠乏性貧血と慢性疾患に伴う貧血(ACD)が合併する。
CKD患者ではヘプシジンが増加することが知られている³⁾⁴⁾。 ヘプシジンは肝臓で産生され、 鉄のトランスポーターであるフェロポーチンを調整し腸管からの鉄吸収と、 マクロファージ、 肝臓、 脾臓などの網内系からの鉄利用を低下させる。 よってCKD患者ではACDが合併していると考えたほうがよく、 一般的な鉄欠乏性貧血のフェリチンとTSATの閾値は使用しない (次項)。
以下のHb値と腎性貧血(=EPO産生低下+赤血球寿命短縮)以外の原因除外で診断される⁵⁾。
血中EPO濃度は腎性貧血の診断補助になる。
Hb<10g/dLで、 EPO<50mIU/mLの場合、 腎臓でのEPO産生が低下していると考えてよい⁵⁾。
EPO>50mIU/mLの場合、 貧血の他の原因を検索したほうが良い。
鉄欠乏性貧血の合併は、 腎性貧血の診断時は勿論だが、 診断して治療を開始した後も合併していないか評価を続ける必要がある。
CKD患者の鉄欠乏性貧血診断基準
CKD患者の鉄欠乏性貧血の診断基準 (=鉄補充の適応) は非CKD患者と異なる。 赤血球造血刺激因子製剤 (ESA: erythropoiesis stimulating agent) の導入前後でも異なる。 以下の数値を参考に個々の症例の病態も加味して検討する⁵⁾。
💡ESA治療前 フェリチン<50
💡ESA治療下 フェリチン<100かつTSAT<20%
腎性貧血の治療はESA製剤の投与である。 具体的な使用法や用量調整は添付文書や他の記事を参照されたい。
目標Hb濃度と治療開始基準⁵⁾
ESA製剤の副作用
以下は特に重大であるため覚えておきたい。
2019年に世界に先駆けて日本で保険承認された新しい機序の腎性貧血治療薬であり、 既に5薬剤が承認されている。 詳細は他記事に譲るが、 適切な使用方法、 副作用への対策を日本腎臓学会が策定する「HIF-PH 阻害薬の適正使用に関するrecommendation」などや添付文書を参考に学んでおきたい。
上記の鉄補充の基準を満たす場合は鉄補充療法を行う。
保存期CKDや腹膜透析患者は内服療法を第1に考えるのが良い。 HD患者と異なり静注療法のアクセス確保が難しく、 経口療法の方が静注療法よりもHbが有意に改善されたというSystematic reviewもある¹⁴⁾。
HD患者では、 静注アクセス確保が容易であるため週1回または2週に1回 含糖酸化鉄(フェジン®)40mgを投与する。 13回の投与(約3~4か月)を1サイクルとしてフェリチン値を評価して継続の可否を検討する⁵⁾。
HD患者でも経口鉄剤が無効であるわけではないので、 経口薬で治療してもよい。 投与方法は非CKD患者の鉄欠乏性貧血と同様でよいが、 ヘプシジン濃度の上昇によって吸収効率が低下している可能性もあるので100mg/日程度まで増量することも検討する。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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