【更新】特発性間質性肺炎の診断基準改訂 (2024年4月~)
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HOKUTO編集部

8ヶ月前

【更新】特発性間質性肺炎の診断基準改訂 (2024年4月~)

2024年4月より、 特発性間質性肺炎 (IIPs) の厚生労働省による診断基準および重症度分類が改訂されることが、 日本呼吸器学会の公式サイトで発表された。

新しいIIPs診断基準について

「組織診断基準」または「臨床診断基準」を満たせば、 IIPsと診断可能に

📝これまで

高分解能CT (HRCT) で明らかな蜂巣肺が確認できるIPFのみが外科的肺生検なしに診断が可能。 それ以外のIPFおよびIPF以外のIIPsは外科的肺生検に基づく病理組織学的診断を要する。

  ▼

🆕今年4月の改訂

蜂巣肺のないIPFおよびIPF以外のIIPsについても、 臨床診断基準を満たせば外科的肺生検なしでの診断が可能。 またiPPFEがIIPsとして認定される。

【更新】特発性間質性肺炎の診断基準改訂 (2024年4月~)
厚生労働省. 指定難病の概要、 診断基準等、 臨床調査個人票 (告示番号1~341) ※令和6年4月1日より適用.をもとに編集部作図

新しいIIPs重症度分類について

Ⅰ~Ⅱ度であっても、 運動時の低酸素血症があれば医療費助成の対象 「Ⅲ度」に認定

📝これまで

I度 (安静時PaO₂≧80Torr) は、 運動時の低酸素血症 (6分間歩行試験で最低SpO₂<90%)を認めてもⅠ度で、 医療費助成の対象外

  ▼

🆕今年4月の改訂

I度 (安静時PaO₂≧80Torr) またはⅡ度 (≧70Torr、 <80Torr) であっても、 運動時の低酸素血症 (6分間歩行試験で最低SpO₂<90%) を認めた場合には、 医療費助成の対象となる重症度Ⅲ度に認定

【更新】特発性間質性肺炎の診断基準改訂 (2024年4月~)
厚生労働省. 指定難病の概要、 診断基準等、 臨床調査個人票 (告示番号1~341) ※令和6年4月1日より適用をもとに編集部作図

<出典>

厚生労働省. 指定難病の概要、 診断基準等、 臨床調査個人票 (告示番号1~341) ※令和6年4月1日より適用. [最終閲覧 2024/3/13]

診断基準の詳細

以下のDefinite (組織診断群)、 あるいはProbable (臨床診断群) の条件を満たすものを特発性間質性肺炎と診断し、 医療費助成もこれらが対象のひとつである。

▼Definite (組織診断群)

主要項目のうち、 (3)の鑑別診断を除外した上で、 (1)の④(2) を満たすもの

▼Probable (臨床診断群)

主要項目のうち、(3)の鑑別診断を除外した上で、 (1)の①(1)の②と③のいずれか(1)の④ のすべてを満たすもの

(1) 主要症状、理学所見及び検査所見

① 主要症状及び理学所見として、 以下の2項目以上を満たす場合に陽性とする

  1. 捻髪音 (fine crackles)
  2. 乾性咳嗽
  3. 労作時呼吸困難
  4. ばち指

② 血清学的検査において、 以下の1項目以上を満たす場合に陽性とする

  1. KL-6上昇
  2. SP-D上昇
  3. SP-A上昇

③ 呼吸機能検査において、 以下の1項目以上を満たす場合に陽性とする

  1. 拘束性障害 (%VC<80%)
  2. 拡散障害 (%DLCO<80%)
  3. 低酸素血症 (以下のうち1項目以上)

- 安静時PaO₂ <80Torr

- 安静時AaDO₂ ≧20Torr

- 6分間歩行時SpO₂ <90%

④ 胸部高分解能CT (HRCT) にて、 以下の1項目以上を両側性に認める場合、 陽性とする

  1. 網状影
  2. すりガラス影
  3. 浸潤影 (コンソリデーション)

(2) 組織所見

外科的肺生検 (胸腔鏡下肺生検または開胸肺生検) にて、 以下いずれかの組織パターンを認める

  1. UIPパターン
  2. NSIPパターン
  3. OPパターン
  4. DIPパターン
  5. RBパターン
  6. DADパターン
  7. LIP パターン
  8. PPFEパターン
  9. 分類不能

(3) 鑑別診断

膠原病や薬剤誘起性、 環境、 職業性など原因の明らかな間質性肺炎や、 他のびまん性肺陰影を呈する疾患を除外する。

特発性間質性肺炎 (IIPs) と鑑別すべき疾患
・ 心不全   ・ 肺炎 (特に異型肺炎) 
・ 既知の原因による急性肺傷害    ・ 膠原病
・ 血管炎   ・ サルコイドーシス  ・ 過敏性肺炎
・ じん肺   ・ 放射性肺臓炎   ・ 薬剤性肺障害
・ 好酸球性肺炎   ・ びまん性汎細気管支炎
・ 癌性リンパ管症   ・ 悪性リンパ腫
・ 浸潤性粘液性肺腺癌   ・ リンパ脈管筋腫症
・ 肺胞蛋白症 ・肺ランゲルハンス細胞組織球症

参考事項

●「Definite (組織診断群)」、「Probable (臨床診断群)」 のいずれにおいても、 特発性間質性肺炎と診断した後に、 細分類を行う。

【更新】特発性間質性肺炎の診断基準改訂 (2024年4月~)
厚生労働省. 指定難病の概要、 診断基準等、 臨床調査個人票 (告示番号1~341) ※令和6年4月1日より適用をもとに編集部作図

「Definite (組織診断群)」 では、 組織パターンに基づいて、 IPF、 idiopathic NSIP、 COP、 DIP、 RB-ILD、 AIP、 idiopathic LIP、 idiopathic PPFE、 分類不能に細分類する 

【更新】特発性間質性肺炎の診断基準改訂 (2024年4月~)
厚生労働省. 指定難病の概要、 診断基準等、 臨床調査個人票 (告示番号1~341) ※令和6年4月1日より適用をもとに編集部作図

「Probable (臨床診断群)」 では、 下記のIPFとiPPFEの臨床診断基準に基づいて、 IPF、 iPPFE、 分類不能 (IPFとiPPFEのいずれの臨床診断基準も満たさない) に細分類する。

※特発性肺線維症 (IPF) の臨床診断基準

 確実 : 主要項目1 + 2の1)と3)
 疑い : 主要項目1 + 2の1)と2)
  1. 特発間質性肺炎 (IIPs) の 「Probable (臨床診断群)」 の診断基準を満たす。
  2. 胸部高分解能CT (HRCT) 所見として、 以下の所見を認める。
  3. 肺底部・胸膜下優位の陰影分布 
  4. 牽引性気管支・細気管支拡張を伴う網状影
  5. 蜂巣肺

※特発性胸膜肺実質線維弾性症 (iPPFE)/ 特発性上葉優位型肺線維症の臨床診断基準

鑑別診断を除外した上で、
 確実 : 主要項目1+2+3 
 疑い : 主要項目1+2 
  1. 特発間質性肺炎 (IIPs) の 「Probable (臨床診断群)」 の診断基準を満たす。
  2. 胸部高分解能CT (HRCT) 所見として、 以下の2項目を認める。
  3. 両側上葉優位の胸膜直下の浸潤影
  4. 両側肺門の上方偏位or上葉の体積減少
  5. 画像上、 両側上肺病変の経時的な増悪が確認できる。
鑑別診断:造血幹細胞移植、 肺移植、 膠原病、 薬剤などによる2次性PPFEや、 画像的に類似した所見を呈する肺尖部胸膜肥厚 (apical cap)、 抗酸菌や真菌などの感染症。
参考事項:理学所見として扁平胸郭を認める。 呼吸機能検査上、 残気率 (RV/TLC) の上昇を認める。

●COPは経気管支肺生検 (TBLB) あるいは経気管支クライオ生検 (TBLC) でOPパターンを認め、 臨床・画像所見がCOPに合致すれば診断可能である。

●診断時にこれらの診断基準を満たしても、 例えば膠原病など、 後になって原因が明らかになった場合は、 その時点で特発性間質性肺炎から除外する。

●診断には、 呼吸器専門医、 胸部放射線診断医、 肺病理専門医の3者による集学的検討 (MDD: multidisciplinary discussion) が推奨される。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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