El-Salhy Mらは, 過敏性腸症候群 (IBS) 患者125名を対象に, 糞便微生物移植の長期的な有効性と安全性を3年間の追跡調査で検討. その結果, 糞便微生物移植は高い奏効率と、 長期有効性を維持することが明らかとなった. 本研究はGastroenterology誌において発表された.
背景
IBSに対する糞便微生物移植 (FMT) の長期的な有効性や有害事象の可能性は不明である.
Fecal Microbiota Transplantation: FMT
研究デザイン
研究対象と方法
- IBSの患者125名 (女性:104名, 男性:21名) を以下の3群に割り付けた.
- プラセボ群:38名
- ドナー糞便30g投与群:42名
- ドナー糞便60g投与群:45名
糞便は十二指腸に投与された.
評価項目
- 患者は, ベースライン時, FMT後2年および3年目に, 糞便サンプルの提供と5つのアンケートに回答した.
- 糞便中の細菌とdysbiosis index (DI) は, 16S rRNA遺伝子PCR DNA増幅/プローブハイブリダイゼーションにより, V3-V9領域を対象として解析された.
研究結果
FMT後の奏効率
<FMT後2年間>
- プラセボ群:26.3%
- ドナー糞便30g投与群:69.1%
- ドナー糞便60g投与群:77.8%
<FMT後3年間>
- プラセボ群:27.0%
- ドナー糞便30g投与群:64.9%
- ドナー糞便60g投与群:71.8%
ドナー糞便30g投与群, 60g投与群の奏効率はプラセボ群に比べ有意に高かった.
症状とDIなど
- ドナー糞便30g投与群, 60g投与群では, FMT後2年目, 3年目ともにIBS症状, 疲労感が有意に減少し, QOLが向上した.
- DIは, FMT後2年目および3年目において, ドナー糞便投与群でのみ減少した.
- 10菌種の蛍光シグナルは, ドナー糞便30g投与群および60g投与群のFMT後のIBS症状および疲労感と有意な相関を示した.
有害事象
結論
IBS患者に対する糞便微生物移植 (FMT) は長期的な高い有効性を示した. 有害事象はわずかで, 特別な治療を要さなかった.
原著
El-Salhy M,et al, Efficacy of fecal microbiota transplantation for patients with irritable bowel syndrome at three years after transplantation. Gastroenterology. 2022 Jun 13;S0016-5085(22)00625-4.PMID: 35709830
👨⚕️監修医師のコメント
Dose dependency (30gと60gを比較し, 60gの方がより高い効果を示している) も示していますし, その効果は確信的だと思います. いかに一般化できるかが今後の課題ですね.