リンパ節転移陽性乳癌患者の術後療法において、 full-doseのエピルビシン+シクロホスファミド (HEC療法) を、 シクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル (CMF療法) とmoderate-doseのエピルビシン+シクロホスファミド (EC療法) と比較した第Ⅲ相ランダム化比較試験の結果より、 HEC療法のCMF療法に対する優越性は示されなかった一方で、 HEC療法の中用量EC療法に対する優越性が示された。
原著論文
▼解析結果
Phase III trial comparing two dose levels of epirubicin combined with cyclophosphamide with cyclophosphamide, methotrexate, and fluorouracil in node-positive breast cancer. J Clin Oncol. 2001 Jun 15;19(12):3103-10. PMID: 11408507
関連レジメン
EC療法
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第Ⅲ相試験の概要
対象
リンパ節転移陽性の術後乳癌患者
方法
777例を以下の3群に1:1:1で割り付けた
エピルビシン100mg/m²+シクロホスファミド830mg/m²を21日毎に8サイクル投与
シクロホスファミド100mg/m²をday1~14に経口投与+メトトレキサート40mg/m²とフルオロウラシル600mg/m²をday1,8に静注、 28日毎に6サイクル実施
エピルビシン60mg/m²+シクロホスファミド500mg/m²を21日毎に8サイクル投与
エストロゲン受容体 (ER) 陽性または未確認の閉経後患者には、 化学療法の最終サイクル終了後にタモキシフェンを1日40mg、 5年間投与された。
評価項目
- 主要評価項目:無イベント生存期間 (EFS) 、 distant-EFS、 全生存期間 (OS)
第Ⅲ相試験の結果
患者背景
- 3群間で同様であった。
- 年齢の中央値は49歳、 ランダム化時点で閉経後であったのは41~44%、 ホルモン受容体陽性は52~58%、 ホルモン受容体陰性は26~31%
化学療法について (HEC群、 CMF群、 EC群)
- 追跡期間中央値:56ヵ月、 58ヵ月、 52ヵ月
- 1週間以上の治療遅延:19%、 21%、 18%
- 予定されていた化学療法を完了:71%、 90%、 84%
- 放射線治療:79%、 79%、 84%
- 化学療法終了時にタモキシフェンを投与された患者:38%、 43%、 40%
EFS
HEC群 vs CMF群
HR 0.96 (95%CI 0.70-1. 31)、 p=0.80
HEC群 vs 中用量EC群
HR 0.73 (95%CI 0.54-0.99)、 p=0.04
distant-EFS
HEC群 vs CMF群
HR 0.97 (95%CI 0.70-1.34)、 p=0.87
HEC群 vs 中用量EC群
HR 0.75 (95%CI 0.55-1.02)、 p=0.06
OS
HEC群 vs CMF群
HR 0.97 (95%CI 0.65-1.44)、 p=0.87
HEC群 vs 中用量EC群
HR 0.69 (95%CI 0.47-1.00)、 p=0.05
EFS率 (3年時)
(95%CI 74-86%)
(95%CI 73-83%)
(95%CI 66-78%)
OS率 (3年時)
(95%CI 89-96%)
(95%CI 87-95%)
(95%CI 85-93%)
5年EFSのサブグループ解析
年齢、 リンパ節転移数、 腫瘍径、 ホルモン受容体の状態、 組織学的悪性度別にみた5年EFSにおいて、 3群のうちいずれかが他の2群より優れているサブグループは同定されなかった。
有害事象 (AE)
- Grade3~4のうっ血性心不全は、 HEC群3例、 中用量EC群1例で報告された。
- 二次原発癌を発症したのは、 HEC群14例、 CMF群7例、 中用量EC群6例。
- HEC群における二次原発癌のうち、 急性骨髄性白血病は3例であり、 HEC群における急性骨髄性白血病の発生率の増加は統計的に有意であった (p=0.05) 。
著者らの結論
- リンパ節転移陽性乳癌患者の術後療法として、 HECレジメンのCMFレジメンに対する優越性は示されなかった。
- HECレジメンは、 中用量ECレジメンと比較し、 EFS、 distant-EFS、 OSにおいて有効であることが示された。