Kenneckeらは、I/ⅡA(T1-T3abN0)の早期直腸癌患者を対象に、経肛門的切除術(TES)前の術前化学療法の有効性を第II相試験で検討。その結果、3カ月の術前化学療法は、かなりの割合で早期直腸癌患者のダウンステージングを促し、その結果、耐容性の高い臓器温存手術が可能となることが明らかとなった。本研究は、J Clin Oncol誌において発表された。
📘原著論文
Kennecke HF, et al, Neoadjuvant Chemotherapy, Excision, and Observation for Early Rectal Cancer: The Phase II NEO Trial (CCTG CO.28) Primary End Point Results. J Clin Oncol. 2022 Aug 18;JCO2200184.PMID: 35981270
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
全直腸間膜切除術が推奨された23例中13例が手術を拒否し、観察期間へ移行することを希望したとのことですが、拒否理由が気になるところです。
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大腸癌のTNM臨床病期分類
大腸癌 (結腸および直腸) の病期分類 (UICC-8版)
JNET分類
大腸腫瘍の組織診断および深達度診断
背景
早期I/ⅡA直腸癌に対する臓器温存療法は、直腸間膜全切除術(TME)に伴う機能障害や永久的な人工肛門を回避することを目的としている。
研究デザイン
- 対象:内視鏡的切除が可能な臨床的T1-T3abN0中部/下部の早期直腸癌患者。
- 3カ月間の術前化学療法(mFOLFOX6またはカペシタビン+オキサリプラチン)後、奏効が確認された患者は、2〜6週間後に経肛門的切除術(TES)に移行した。
- 主要評価項目:プロトコールで規定された臓器温存率(腫瘍がypT0/T1N0/Xにダウンステージし、根治手術を回避した患者の割合と定義)。
研究結果
- 参加者58名全員が化学療法を開始し、56名がTES手術に移行した。
- 58人中33人がypT0/1N0/Xにダウンステージし、intention-to-treatプロトコルで指定された臓器保存率は57%(90%CI 45-68)であった。
- TME手術が推奨された残りの23人の患者のうち、13人はTME手術を拒否し、そのまま経過観察に進むことを選択し、79%(90%CI 69-88)が臓器温存に成功した。
- 残りの10名は、推奨されたTMEに進み、7人は病理組織学的な残存病変がなかった。
- 局所無再発生存率
- 1年:98%(95%CI 86-100)
- 2年:90%(95%CI 58-98)
- 遠隔再発および死亡はなかった。
- QOLと直腸機能スコアに最小限の変化が認められた。
結論
3カ月の導入化学療法は、早期直腸癌患者のかなりの割合でダウンステージに成功し、耐容性の高い臓器温存手術が可能になる。