HOKUTO編集部
5ヶ月前
標準治療を変えうる質の高い演題が報告される欧州臨床腫瘍学会 (ESMO) はその名の通り、 毎年欧州の主要都市で開催されている。 しかし、 我々のようなアジアの腫瘍内科医にとっては距離的な点でアクセスしやすい学会ではない。 そのような中、 ESMOが運営し、 毎年シンガポールで開催されている腫瘍学に特化した学会が、 「ESMO Asia」である。
12月1~3日に開催された本年のESMO Asiaの印象記では、 特定の演題に触れて解説する形式でなく、 学会自体の雰囲気を中心に記載したいと思う。
まずシンガポールに到着した際に、 厚着をしていたことを後悔した。 南国であることを筆者は深く考えていなかったが、 シンガポールは12月でも25~30℃であり、 街中の人々やESMO Asiaに参加していた研究者の多くが半袖であった。
本年のESMO Asiaは前述の通り、 毎年シンガポールで開催されており、 会場はシンガポール中心部のSuntec Cityの3階および4階であった。
具体的には3階に登録受付やESMOメンバーラウンジ、 会議室が設置されており、 4階には口演会場が6つとポスター会場が2つ、 展示ブースが設置されていた。 この中でも特徴的であったのが、 ポスター会場であった。
通常、 国内学会や国際学会を問わず、 ポスター会場では平行にポスター掲示板が設置される。 しかし、 ESMO Asiaではラビリンスのように入り組んだ形でポスター掲示板が設置されており、 一部では正面のポスター掲示板との距離が約1m程度と、 密な環境であった。 ただし、 会場やホテル内は基本的に冷房がかかっており、 室温的には快適な空間で世界中の研究者とコミュニケーションを図ることが可能であった。
消化器癌領域の口演内容に関しては、 ESMO等の国際学会で発表された内容のアップデート解析 (例 : SPOTLIGHT試験、 GLOW試験) やアンコール発表、 アジア人のサブグループ解析 (例 : KEYNOTE-859試験、 RATIONALE-305試験) がメインであり、 発表者もアジアの研究者が目立つ印象であった。
ESMOは日本臨床腫瘍学会 (JSMO) 等と連携してアジアの現状を踏まえたpractice guidelineの策定を行っており、 該当する年度ではこちらの発表が行われることもあった。
また、 ESMOや米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム (ASCO-GI) となると、 ディスカッション内容が欧米の実臨床やエビデンスに基づくことが多いが、 ESMO Asiaではアジア人の研究者が多く参加しており、 アジア各国の実情やエビデンスに基づく議論がしばしば行われていたことも特徴的であった。
若手医師にとっては、 ESMOに参加するには地理的にも時間的にも制約が多いと考えられるが、 シンガポールで開催されるESMO Asiaであれば約7時間のフライトで参加可能であるためESMOよりも参加しやすい。 今後の研究活動の際の参考になれば幸いである。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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