【CECILIA】パクリタキセルのしびれに手足冷却の効果を示せず、温度設定に課題ー乳癌患者で
著者

HOKUTO編集部

1ヶ月前

【CECILIA】パクリタキセルのしびれに手足冷却の効果を示せず、温度設定に課題ー乳癌患者で

【CECILIA】パクリタキセルのしびれに手足冷却の効果を示せず、温度設定に課題ー乳癌患者で
周術期に週1回のパクリタキセル (PTX) 療法を受ける乳癌患者を対象に、 化学療法誘発性末梢神経障害 (CIPN) 予防目的での手足冷却装置を用いた冷却療法の有効性および安全性を評価した第Ⅲ相無作為化比較試験CECILIAの結果が発表された。  手足冷却療法の13℃設定と25℃設定が比較されたが、 中等度以上の末梢神経障害の発生率に有意差は認められなかった。 がん研有明病院院長補佐/乳腺内科部長の高野利実氏が発表した。

背景

CIPNの予防・治療は大きな臨床課題

乳癌治療においては、 PTXをはじめとするタキサン系薬剤が広く用いられているが、 その主要な副作用の1つがCIPNである。 CIPNは手足のしびれや痛みを引き起こし、 患者のQOLを著しく低下させるだけでなく、 治療継続を困難にする要因にもなり得る。

しかし、 CIPNに対する有効な予防法や治療法は、 依然として確立されていない。 これまで国内では、 手足冷却療法による介入について自己対照研究や第II相試験が実施され、 CIPNの発症抑制効果が示唆されてきたものの、 検証的な大規模試験は行われていなかった。

CECILIA試験は、 こうした先行研究の知見を踏まえ、 手足冷却療法の有効性を評価する第III相無作為化比較試験として実施された。

試験の概要

周術期PTX投与例を対象としたRCT

周術期PTX療法 (80mg/m²、 60分間の点滴静注) を週1回、 計12回受ける予定の乳癌患者150例を対象に、 手足冷却装置*を用いて13℃群または25℃群に1:1で無作為に割り付けた。 各群にはそれぞれ75例が登録された。

*冷却デバイスは日本シグマックス株式会社より提供された整形外科領域で承認済の機器であり、 本研究では手足冷却用に手足用パッド (グローブ・ソックス) を改良して使用した。 ペルチェ素子を用いて冷却液を循環させ、 パッドを通じて四肢から熱を吸収する仕組みである。 設定温度は事前に固定され、 使用中は表示されなかった。

主要評価項目は患者評価による中等度以上のしびれの発症率

主要評価項目は、 PTX療法終了時点におけるPNQグレードD*以上の割合であった。 副次評価項目には、 冷却療法に関連する有害事象 (AE) などが含まれた。

*Patient Neurotoxicity Questionnaireに基づく、 日常生活動作に支障をきたす中等度の症状

試験の結果

両群の患者背景は同様

両群で患者背景に大きな偏りは認められなかった。 年齢中央値は53歳、 全例が女性で、 ECOG PS 0は91%を占めた。 周術期治療の内訳は術前が44%、 術後が56%であり、 38%は抗HER2療法を併用していた。 化学療法既治療例は26%、 治療開始時にGrade 1のCIPNを有していた症例は15%であった。

主要評価項目に有意差なし

PTX投与終了時のPNQグレードD以上の割合は、 13℃群が33.3%、 25℃群が29.3%と、 両群間に有意差は認められなかった (p=0.76)。

13℃群でむしろCIPNが遷延していた

PTX投与終了3ヵ月後のPNQグレードD以上の割合は、 25℃群の16.2%に比べて13℃群では32.0%と高く、 13℃群でCIPNが遷延する症例が多かった (p=0.035)。また、 登録時期が6~9月の患者に限定した解析では、 PTX投与終了時点のPNQグレードD以上の割合は13℃群で高値を示した (58.1% vs 25.8%)。

なお、 PTX投与終了時の手の表面温度が平均値 (21.5℃) を下回っていた患者では、 PNQグレードD以上の割合が38.5%と、 全体集団よりもやや高い傾向がみられた。

冷却装置の忍容性は良好

凍傷を含む新たなAEは報告されなかった。 いずれの群においても、 冷却装置の使用に関連する重篤なAEは認められず、 全体として良好な忍容性が示された。

結論

過度な冷却は不要?手足冷却の至適温度が課題

CECILIA試験では、 乳癌患者におけるPTX誘発性末梢神経障害の軽減効果について、 手足冷却装置の13℃設定と25℃設定の間に有意差は認められなかった。 一方で、 本冷却療法は安全かつ実用的であることが確認された。

高野氏は、 「本試験では主要評価項目を達成できなかったものの、 効果の期待できない温度として25℃を設定した対照群においても一定の予防効果があった可能性や、 過度な冷却がかえって効果を減弱させた可能性も考えられる。 今後、 至適温度を検討する追加研究が必要である」 と述べた。

関連コンテンツ

JAMA Oncol : 手の冷却・圧迫でCIPN発現低下

HOKUTO編集部、 海外ジャーナルクラブ

ポストのGif画像
【CECILIA】パクリタキセルのしびれに手足冷却の効果を示せず、温度設定に課題ー乳癌患者での全コンテンツは、医師会員限定でアプリからご利用いただけます*。
*一部のコンテンツは非医師会員もご利用いただけます
臨床支援アプリHOKUTOをダウンロードしてご覧ください。
今すぐ無料ダウンロード!
こちらの記事の監修医師
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
QRコードから
アプリを
ダウンロード!
【CECILIA】パクリタキセルのしびれに手足冷却の効果を示せず、温度設定に課題ー乳癌患者で