学会発表は業務命令ですか?
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HOKUTO通信

12ヶ月前

学会発表は業務命令ですか?

学会発表は業務命令ですか?
指導医 「この症例、 学会発表にどう?」 
専攻医 「これは業務命令ですか?」 
こんな受け答えが当たり前になるかもしれない。 兵庫県内の病院で専攻医 (当時26歳) が過労死したとされる問題をきっかけに、 業務と自己研鑽の線引きをどうするかが改めて注目されている。

事案の概要

専攻医の過労死を巡っては、 労働基準監督署は、 専攻医が自殺する直近1カ月の残業を207時間と認定した。 一方、 専攻医が申請していた残業時間は約30時間だった。 病院は 「労基署の認定は自己研鑽の時間が含まれている」 と主張している。

厚労省の見解は…

厚生労働省が2020年に出した通達では、 自己研鑽と労働の区別について 「上司の明示・黙示の指示がある場合は、 時間外に行われるものでも、 本来業務との直接の関連性なく行われるものでも、 労働時間に該当する」 としている。

学会発表は業務命令ですか?
厚労省の公表資料より

また、 「業務上必須ではない行為を自由意思に基づき、 上司の明示・黙示による指示なく行う時間については労働時間に該当しない」とする一方、 「診療の準備又は診療に伴う後処理として不可欠なものは労働時間に該当する」としている。

指示がなくても、 学会に参加しないことで不利益がある場合なども労働に該当するという。 この通達に照らせば、 業務に不要な論文作成を上司の指示なく行う場合は自己研鑽扱いとなる。

医師の意見

ただ、 上司から指示があったか、 業務と関連するかどうかを一律に線引きするのは難しい。 X (旧Twitter) などSNSの医師アカウントでは、 「学会発表や論文作成が業務じゃなて自己研鑽なら、 医局や病院の業績に載せるのはおかしいと思う」 などの声が上がる。

別のアカウントでは「3日連続寝ずに働いたことがある。 成長のためと考えていた。 研修医の仕事は全て自己研鑽とも言えてしまう。 病院が自己研鑽の時間も含めて考慮しなければ、 いつまで経っても現場の医師を守ることにはつながらない」との訴えもある。

学会発表は業務命令ですか?
写真はイメージです

都内の医師は、 「勉強会の参加は自由にし、 都合に合わせて視聴できるオンデマンド配信などの体制を整えてほしい」 と明かす。 また、「論文発表や学会参加は週1回の研究日を設けている病院も多いが、 実際には外勤バイトに回されている。 本来は外勤せず研究に専念できる環境を作るべきだが、 給与調整が難しければ論文や学会も自由参加にするべき。 正直、 世の中の発表・研究の9割は無意味だ」 と強調した。

働き方改革でどうなるか

医師の働き方改革が2024年4月から始まれば、 勤務医の時間外労働は、 休日労働を含めて原則年960時間に規制されることになる (罰則付き) 。 医師の労働環境の改善が狙いの一つだが、 HOKUTO編集部には「宿日直許可が新しい隠れ蓑になるだけ。 医者の労働環境はそうそう変わらない。 役所も政治家も医者のお偉いさんも変える気がないんだから」など悲観的な意見も寄せられている。

参考資料

厚生労働省:医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について

こちらの記事の監修医師
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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