HOKUTO編集部
17日前
神奈川県立がんセンターの廣島幸彦先生による本連載、 第4回は 「組織検体と血液検体の使い分け」 について解説します!
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前回解説したように、 がん遺伝子検査で使用する検体には組織検体と血液検体がある。 どちらの検体を使うかは、 がん種を含めた検体状況によって異なる。
組織検体と血液検体がある場合、 基本的には 「組織検体を優先」 と考える。
組織検体には腫瘍細胞が豊富に含まれているため、 遺伝子変異や異常を高い精度で検出できる。
特に、 治療後に新たに採取した検体などの新しい検体がある場合は、 血液検体よりも組織検体を優先する。
治療後の再生検が困難などの理由で 「治療前に採取した組織検体」と「治療後に採取した血液検体」の場合は、 ケースバイケースで考える必要がある。
「耐性変異の検出が目的か」 が1つのポイント
血液検体は腫瘍由来のDNAが循環血中から検出できるため、 がんの進行状況や治療に対する反応、 耐性変異の有無をモニタリングすることが可能である。
組織検体の使用を検討する例
例えば去勢抵抗性前立腺がんの標的となるBRCA2遺伝子変異は、 治療後に変異を生じる可能性が少ない。 そのため、 治療前に採取した検体であっても、 組織検体を用いて検査を行う。
なお、 パネル検査の規約¹⁾²⁾では、 組織検体の有効期限は3年とされている。 しかし、 前立腺がんは進行が遅いことなどから、 10年を超えて保存されている検体を用いた検査が有効な症例もある。
また、 非小細胞肺がん (NSCLC)で組織検体を用いたコンパニオン診断が陰性だった症例には、 偽陰性となっている例が2割程度存在する。 その場合は、 同様の組織検体を用いたがん遺伝子パネル検査の実施が有用なことがある³⁾。
血液検体の使用を検討する例
NSCLCでは、 ドライバー遺伝子の耐性変異の検出を目的とするかどうかで判断する。 目的である場合は血液検体、 そうでない場合は組織検体の使用を検討する。 耐性変異として、 EGFR遺伝子のT790M変異やALK融合遺伝子のG1202R変異が挙げられる。
また、 Off-target変異*の検出にも血液検体が有用である。 例えば、 オシメルチニブで治療中のEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者の血液検体を用いたがん遺伝子検査で、 新たなOff-target変異としてMET遺伝子増幅やRET融合遺伝子などの出現を確認できることがある。
検体選択まとめ
検体選択の判断を以下にまとめる。 例外もあるため、 あくまで一つの指針として参照されたい。
血液検体を使用する場合は特に、 「検査タイミングが適切か」 に注意する必要がある。 適切なタイミングで検査しないと、 ctDNA濃度が低いために変異が検出されず偽陰性となる可能性がある。
現在、 保険適用できるがん遺伝子検査は1回のみであり、 再検査には適用できない。 そのため、 検査タイミングには慎重な検討が必要である。
第5回では 「コンパニオン診断薬とみなしコンパニオン検査」 について解説する。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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