寄稿ライター
14日前

こんにちは、 Dr.Genjohです。 2026年8月、 民間医療施設に勤める非公務員医師の月給が、 平均で11.8万円安くなったという衝撃的な調査結果が公表されました。 今回はこの結果を深掘りしていきます。
公表されたのは、 「令和8年 人事院勧告・報告の概要」 (2026年8月7日付)。 民間企業の賃上げを受け、 政府機関である人事院は、 公務員の月例給を平均15,056円 (3.51%) 引き上げる高水準のベースアップが勧告しました。

同時に公表された参考資料が 職種別民間給与実態調査 です。 【図1】は令和5年~令和8年の勧告に示された民間医療機関勤務医の平均月給 (時間外手当を除く、 いわゆる固定給) をまとめたものです。 なお原典の職種区分では 「医師」 が役職の付かないスタッフ医師を指すので、 本記事ではこれを 「ヒラ医師」 と呼びます。
騒がれている 「11.8万円安」 は、 このヒラ医師のR7→R8だけを切り取った数字です。 全体で見れば、 もう少し穏やかな変化に留まっていますね。
しかもヒラ医師はR5:100.4万→R6:93.5万→R7:105.1万→R8:93.2万と上下しており、 一本調子で下がっているわけではありません。 R7→R8では調査対象の実人員が1,041人→1,605人、 平均年齢が44.3歳→42.1歳と動いています。 減額の一部は、 サンプル構成の変化を映しているとみるのが妥当でしょう。

一方で副院長と医科長は、 R6年以降やや持ち直しています。 いわゆる 「脂の乗った実働部隊」 です。 母集団が民間医療機関ですから、 売り上げに直接貢献する現役世代が相対的に優遇されているのかもしれません。
逆に病院長とヒラ医師は、 R5年と比べて明らかに水準を落としました。 医業赤字が膨らむ中、 病院長が自分の給与を第一に保全するのは難しいでしょう。 修練のさなかにある若手Drに十分な給与を出す猶予も、 なくなってきているのかもしれません。
そして最も目を引くのが歯科医師です。 この3年間でR5:604,473円→R8:858,676円と1.42倍に伸びました。 R8年のヒラ医師が932,080円ですから、 逆転も間もなくかもしれません。 需給バランスの変化と自由診療の力を、 ひしひしと感じます。

【図2】は時間外手当の推移です。 R6→R7は歯科医師を除く全階級で大きく伸び、 R8ではヒラ医師・副院長・歯科医師がさらに増加、 病院長・医科長はやや反落しました。 ヒラ医師は11.7万円 (R6) →17.7万円 (R8) と、 2年で6万円増です。
2024年4月に医師の時間外労働の上限規制が適用開始 (いわゆる医師の働き方改革) されて以降、 「残業手当を請求できない時間が増えただけ」 という声も耳にします。 ですが少なくとも民間医療機関では、 時間外手当の運用が正常化したような印象を受けます。
気になるのは大学病院を含む公立病院ですが……。 本資料では公務員は医療職俸給表の該当人数しか示されておらず、 医師手当・地域手当・時間外手当が載っていないため、 残念ながら対比が出来ません。

【図3】は、 図1と図2を足し合わせた総支給月給額です。 歯科医師を除くと、 R8年もR5年の水準を保っているのは医科長だけ。 他の階級はいずれも下落しました。 特に病院長とヒラ医師は、 固定給の減額を時間外手当の伸びで相殺しきれていません。 (歯科医師はR5:62.2万円→R8:91.9万円。 ここでも独走です。 )
ただ、 この傾向は今後変わる可能性があります。 令和8年度診療報酬改定では、 ベースアップ評価料の対象職員が 「保険医療機関に勤務する職員」 全体へ拡大された一方で、 40歳以上の医師・歯科医師は明示的に除外されました。 病院長・副院長・医科長の一部は、 給与が伸び悩む恐れがあります。
反対に若年のヒラ医師の給与は上がる可能性があります。 これが若年の保険診療離れを抑止してくれることを、 願ってやみません。

Xアカウント : @DrGenjoh

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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