Ostrowitzkiらは, 早期のアルツハイマー病 (AD) 患者を対象に, ヒト化モノクローナル免疫グロブリンG4抗体 「クレネズマブ」 の安全性と有効性を2件の第Ⅲ相多施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験で検討 (CREAD試験, CREAD-2試験). その結果, クレネズマブは忍容性に優れていたが, 早期AD患者の臨床的な症状悪化の低下につながらなかった. 本研究は, JAMA Neurol誌において発表された.
📘原著論文
Evaluating the Safety and Efficacy of Crenezumab vs Placebo in Adults With Early Alzheimer Disease: Two Phase 3 Randomized Placebo-Controlled Trials. JAMA Neurol. 2022 Sep 19;e222909.PMID: 36121669
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
アルツハイマー病に対する治療薬は本試験を含めて軒並み第Ⅲ相試験に失敗しています. マーケットも強い関心を置いている分野であるため, アカデミアとしては常に冷静な判断が必要です. この領域では, 第Ⅲ相試験結果まではどの薬剤においても何も言えない, というのが現在の理解で良いと思います.
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背景
ADは, 脳内のβアミロイド斑とτタングルを特徴とする神経変性疾患であり, 疾患の進行を抑制する治療薬が十分に承認されていない 「アンメットメディカルニーズ*」 である.
Unmet Medical Needsとは
いまだに治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズのこと (編集部追記)
研究デザイン
- 対象:50~85歳の早期AD患者
- 以下の2群に1対1でランダムに割りつけ.
- クレネズマブ群
CREAD:404名, CREAD-2:407名
CREAD:409名, CREAD-2:399名
- 介入:プラセボor クレネズマブ60mg/kgを4週ごとに最大100週まで静脈内投与.
- 主要評価項目:CDR-SBスコアのベースラインから105週目までの変化.
研究結果
- CREAD試験におけるCDR-SBスコアのベースラインからの平均変化量の群間差は, 105週時点で-0.17 (95%CI -0.86-0.53, P=0.63) であった.
- 安全性に関する新たな懸念点は確認されず, 浮腫を伴うアミロイド関連の画像異常はまれで, 軽度かつ一過性のものであった.
- ADバイオマーカーに有意な変化は認められなかった.
- 中間解析の結果, CREAD試験において主要評価項目を達成する可能性が低いことが示され, 両試験ともに中止となった.
結論
クレネズマブは忍容性に優れていたが, 早期AD患者における臨床症状の悪化を抑制できなかった.