HOKUTO編集部
1年前
解説:赤松弘朗先生¹⁾ / 監修:津谷康大先生²⁾
切除不能III期NSCLCに対する標準治療は化学放射線療法後の抗PD-L1抗体デュルバルマブである (PACIFIC試験)¹⁾。 EGFR遺伝子変異陽性例に対する免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) は有効性が低いことが進行期において報告されている (KEYNOTE-789試験)。 切除不能III期でEGFR遺伝子変異陽性の場合も、 同様にICIの有効性が乏しい事が近年報告された。
PACIFIC試験のサブセット解析 (Naidoo, JTO 2023)²⁾は35例と少数ながら、 デュルバルマブの無増悪期間中央値 (mPFS) は11.2ヵ月、 プラセボのmPFSは 10.9ヵ月であった。
WCLC 2023では後方視的研究ながらより大規模な検討が報告された³⁾。 デュルバルマブ (n=56) ・プラセボ (n=47) の有効性はほぼ同等であった。
以上より、 正解は2
PACIFIC試験はEGFR遺伝子変異陽性肺癌を含んでいるが、 症例数が少ないため、 この集団に対するデュルバルマブの有効性は明確ではない。 PACIFIC試験のサブセット解析においても無増悪生存期間 (PFS) のHR 0.91 (0.39-2.13)、 全生存期間 (OS) のHR 1.02 (0.39-2.63)と、 その点推定値は全体集団よりは劣る。
PD-L1が60%と高発現であることからデュルバルマブの効果も期待されるが、 EGFR遺伝子変異陽性かつPD-L1高発現はかなり頻度が低いため、 参考となるデータは極めて乏しい。 そのためデュルバルマブによる有害事象も考慮し、 慎重な判断が求められる。
今後はEGFR遺伝子変異陽性肺癌に対するKey drugであるEGFR-TKIの切除不能III期における開発について期待したい。
以上より2を選択したい。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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