【IBDマニュアル】カルシニューリン阻害薬
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4ヶ月前

【IBDマニュアル】カルシニューリン阻害薬

【IBDマニュアル】カルシニューリン阻害薬
本連載では原因不明で治療が困難な炎症性腸疾患 (IBD) について、 疫学・病態・治療などの観点から解説を行います。 最新のエビデンスを基にしておりますので、 ぜひ臨床の参考としていただければ幸いです。

執筆 : 金澤 潤先生

北里大学消化器内科学 助教

タクロリムスとは

タクロリムスは、 1984年に茨城県つくば市の土壌から分離された放線菌の代謝産物として発見されたカルシニューリン阻害薬である。 当初は肝移植後の拒絶反応抑制を目的に1993年に日本で導入され、 現在では腎臓、 心臓、 肺、 膵臓などの臓器移植後の拒絶反応抑制にも広く用いられている。

2009年に潰瘍性大腸炎に対し保険適用が拡大され、 使用可能となった。

作用機序

タクロリムスはカルシニューリン阻害薬であり、 T細胞内のカルシニューリンの活性を阻害することで免疫抑制作用を発揮する。 カルシニューリンは細胞内カルシウム濃度の上昇に伴い活性化し、 nuclear factor of activated T-cells (NFAT)の脱リン酸化を介してIL-2、 IFN-γ、 TNF-αなどの炎症性サイトカイン発現を促進する。 IL-2は細胞障害性T細胞やナチュラルキラー細胞、 B細胞を活性化し、 免疫応答を促進する主要なサイトカインである。 タクロリムスはこれらの経路を阻害することでIL-2、 IFN-γ、 TNF-αなどの炎症性サイトカインの発現を抑制し、 免疫系の過剰な活性化を抑える。

適応

重症例のステロイド抵抗例 (ステロイド大量静注療法を施行しても1週間程度で明らかな改善が得られない) や、 中等症例の中でも臨床症状や炎症反応が強い場合、 経口摂取が不可能な劇症に近い症例の寛解導入療法として使用される。

投与方法

1日2回の経口投与が基本となる。 初回投与量は0.025㎎/kg/回で開始し、 治療初期の2週間は血中濃度を高トラフ (10~15ng/mL) に維持するよう調整する。 ただし、 寛解導入時にはトラフ値を速やかに上げることが重要であり、 実臨床では添付文書の2倍量の0.05㎎/kg/回前後で投与することが多い。

2週間投与しても臨床症状の改善が認められない場合は、 投与を中止する。 治療効果が確認された後は低トラフ (5~10ng/mL) に減量し、 通常は3か月以内に投与を終了する。

タクロリムスの投与スケジュール
【IBDマニュアル】カルシニューリン阻害薬
金澤氏提供資料を基に編集部作成

投与時の注意点

治療初期は頻回に血中トラフ濃度を測定し投与量を調節するため、 入院又はそれに準じた状況下で投与することが望ましい。 投与時間と血中トラフ値の測定時間を統一することで、 濃度変動を最小限に抑えるよう注意が必要である。 また、 絶食下での吸収率が高いことから、 投与開始時は絶食下で投与し、 食事再開後はトラフ値の変動に注意する必要がある。

寛解導入療法としての役割を終えた後は、 アザチオプリンや生物学的製剤への切り替えを検討する。 アザチオプリンの治療効果発現には時間を要するため、 タクロリムスを投与している低トラフ期間中に併用を開始する。

副作用

主な副作用として腎機能障害、 高カリウム血症、 高血糖、 感染症、 心不全、 振戦、 頭痛、 低マグネシウム血症が挙げられる。 これらは主に高トラフ期間中に発現し、 低トラフ期間や投与終了後に改善することが多いが、 腎機能障害は不可逆性である可能性があるため注意が必要である。 当院では、 入院中は外液を1,000~2,000mL/日投与し、 外来では飲水を励行することで腎保護を図っている。

なお、 タクロリムス投与中の生ワクチン接種は禁忌である。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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