前治療歴のある、 局所進行性または転移性乳癌患者において、 エリブリンメシル酸塩 (以下、 エリブリン) の効果を、 担当医による選択薬 (TPC:treatment of physician's choice) を対照に検証した第Ⅲ相ランダム化比較試験EMBRACEの結果より、 全生存期間 (OS) に対する有効性が示された。
原著論文
▼解析結果
Eribulin monotherapy versus treatment of physician's choice in patients with metastatic breast cancer (EMBRACE): a phase 3 open-label randomised study. Lancet. 2011 Mar 12;377(9769):914-23. PMID: 21376385
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EMBRACE試験の概要
対象
- 前治療歴のある、 局所進行性または転移性乳癌患者
- アントラサイクリン系およびタキサン系抗癌剤を含む2-5レジメンの化学療法歴があり、 局所再発または転移性乳癌に対して2レジメン以上の化学療法歴を有する患者
方法
762例を以下の2群に2:1で割り付けた。
エリブリン1.4mg/m²をday1,8に21日毎投与
評価項目
主要評価項目:OS
副次評価項目:無増悪生存期間 (PFS)、 奏効率 (ORR)、 奏効期間
EMBRACE試験の結果
患者背景
- 両群で同様であった。
- 年齢中央値は55-56歳、 アジア人は1%、 HER2陽性は16%、 トリプルネガティブは19%
治療状況
- エリブリン投与期間中央値は3.9ヵ月。 TPCの治療期間中央値は、 化学療法を受けた患者 (238例) で2.1ヵ月、 ホルモン療法を受けた患者 (9例) で1.0ヵ月であった。
- 59%が5サイクル以上のエリブリン投与を行った。
OS中央値
(95%CI 11.8-14.3ヵ月)
(95%CI 9.3-12.5ヵ月)
HR 0.81 (95%CI 0.66-0.99)、 p=0.041
OS率 (1年時)
PFS中央値
(95%CI 3.3-3.9ヵ月)
(95%CI 2.1-3.4ヵ月)
HR 0.87 (95%CI 0.71-1.05)、 p=0.137
ORR
p=0.002
奏効期間 (中央値)
(95%CI 3.8-5.0ヵ月)
(95%CI 6.7-7.0ヵ月)
p=0.159
臨床的有用率
有害事象 (AE)
- 重篤なAEはエリブリン群25%、 TPC群26%、 治療中止に至ったAEはエリブリン群13%、 TPC群15%に発現した。
- エリブリン群でTPC群より多くみられたGrade3-4のAEは、 好中球減少、 白血球減少、 末梢神経障害であった。
- Grade3-4の好中球減少は、 エリブリン群45%、 TPC群21%で認め、 発熱性好中球減少は、 エリブリン群5%、 TPC群2%で発症した。
著者らの結論
前治療歴のある、 局所進行性または転移性乳癌患者において、 エリブリン投与はTPCと比較しOSを有意に延長させることが示された。