HOKUTO編集部
2ヶ月前
感染症危機が発生した場合の国の対応を定めた 「新型インフルエンザ等対策政府行動計画 (以下、 政府行動計画)」 は今年、 2013年の策定以来初めて抜本的に改定された。 今回の改定では、 新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) のパンデミックの経験を踏まえて幅広い感染症に対応するため、 より具体的で拡充された内容が盛り込まれた。 改定のポイントについて、 内閣官房・内閣感染症危機管理統括庁の内閣審議官である日下英司氏が報告した。
COVID-19の大流行によって感染症危機管理の司令塔機能強化が求められ、 2023年9月1日に 「内閣感染症危機管理統括庁」 が設置された。 統括庁は、 感染症対策の企画や省庁間の調整を行い、 厚生労働省と連携して政府の対応を統括している。
政府行動計画は、 もともとは感染症危機が発生した場合に平時の準備や感染症発生時の対策の内容を示すものとして、 特別措置法に基づき2013年に策定されたものである。 当初は主に新型インフルエンザウイルス感染症への対応を想定して策定されたが、 COVID-19対応の教訓を踏まえ、 統括庁の発足に伴い今年7月2日に大幅に改正された。
感染症発生時には、 本邦ではこの政府行動計画を基に基本的対処方針が作成され、 実行される。 2025年4月には、 感染症に関する情報収集や分析、 リスク評価を行う「国立健康危機管理研究機構 (JIHS)」 が設置される予定で、 統括庁とともに感染症対策が進められることとなっているという。
政府行動計画の主な改定ポイントは以下の通りである。
対象疾患は旧計画では新型インフルエンザがメインであったが、 新計画ではCOVID-19や新型インフルエンザ以外の呼吸器感染症の記載を充実させた。
平時の準備について、 旧計画では「未発生期」としてまとめて記載されていたが、 新計画では対応すべき時期を3期 (準備期、 初動期、 対応期) に分け、 うち準備期の取り組みを充実。 医療・検査の体制立ち上げを迅速に行う体制を確保し、 民間企業を含めた研究開発エコシステムの構築やDX (デジタル・トランスフォーメーション) の推進などに取り組むこととした。
対策項目について、 旧計画では6項目であったものを新計画では13項目に拡充し、 内容を精緻化。 特に水際対策や検査、 ワクチン等の項目について、 偏見・差別等の防止や偽・誤情報対策も含めたリスクコミュニケーションの在り方等を整理した。
各分野横断的な取り組みとして、 以下の5つの視点を設定した。
旧計画では比較的短期の収束を前提としていたが、 新計画では、 中長期的に複数の波が来ることも想定して対策を整理。 感染拡大防止と社会経済活動のバランスを踏まえ、 柔軟かつ機動的な対策に切り替えた。
旧計画では 「おおむね毎年度フォローアップ」 としていたが、 新計画では、 計画の実施状況を毎年フォローアップし、 おおむね6年ごとに計画の改定を行うことを明記した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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