HOKUTO編集部
1年前

進行・再発子宮体癌領域では、 複合免疫療法であるNRG-GY018/KEYNOTE-868レジメン、 DUO-E doubletレジメン、 DUO-E tripletレジメンが相次いで保険適用となりました。 本稿では、 各レジメンを比較しながら実臨床での導入ポイントなどを解説いただきます (解説医師 : 東京慈恵会医科大学産婦人科学講座講師 西川忠曉先生)。
免疫チェックポイント阻害薬と、 殺細胞性抗癌薬やその他の分子標的薬を組み合わせた治療法を複合免疫療法という。
複合免疫療法の開発は、 進行・再発子宮体癌領域でも進んでいる。 具体的には、 経口チロシンキナーゼ阻害薬であるレンバチニブを用いたKEYNOTE-775レジメン、 殺細胞性抗癌薬であるTC (パクリタキセル+カルボプラチン) 療法を用いたNRG-GY018/KEYNOTE-868レジメンならびにDUO-E doubletレジメン、 PARP阻害薬であるオラパリブを用いたDUO-E tripletレジメンが保険適用となっている。
DUO-E試験¹⁾およびNRG-GY018/KEYNOTE-868試験 (NRG-GY018試験)²⁾の登録基準等に基づき、 実臨床でそれぞれのレジメンを使い分けることが重要である。
例えば、 術後化学療法から12ヵ月以下での再発に対しては、 これまで通りレンバチニブ+ペムブロリズマブ療法がよい適応と考えられる。 子宮癌肉腫の進行・再発に対しては、 DUO-Eレジメンを用いることが合理的である。
一方で、 DUO-E試験とNRG-GY018試験の主要評価に関する統計設定は全く異なっており、 そもそも同じ土俵で両レジメンの有効性を直接比較することは難しい。
両レジメンでは、 臨床試験における各層別化因子のサブグループ解析結果やコンパニオン診断薬の有無、 医療費、 さらには投与方法など、 それぞれに多くのメリットとデメリットが存在している。
そのため、 各レジメンのメリット・デメリットを患者と共有し、 患者ごとのニーズを把握した上で、 shared decision makingのプロセスを通じて一緒に治療法を決定していくことが望ましい。
DUO-E試験、 NRG-GY018試験の詳細を以下に示す。
子宮癌肉腫を含む進行・再発子宮体癌の患者*¹を対象に、 TC療法とdoubletレジメン、 tripletレジメンを比較した国際共同第Ⅲ相ランダム化比較試験である。



層別化因子としては、 MMR (mismatch repair、 deficient or proficient)、 疾患ステータス (初発 or 再発)、 地域 (アジア or 非アジア) の3項目が設定され、 患者は3群へ1 : 1 : 1に振り分けられた。
維持療法は原病増悪ならびに忍容不能な毒性を認めない限り続けられ、 主要評価項目には全体集団 (intention to treat : ITT) におけるPFS (TC vs doubletとTC vs triplet)、 副次評価項目にはOSと安全性などが設定された。
子宮癌肉腫を除く進行・再発子宮体癌の患者*¹を対象に、 TC療法とTC+PEM療法を比較した国際共同第Ⅲ相ランダム化比較試験である。


層別化因子としては、 MMR、 ECOG PS (0 or 1~2)、 周術期化学療法歴 (有 or 無) の3項目が設定され、 患者は2群へ1 : 1で割り付けられた。
維持療法はペムブロリズマブ400mgが6週サイクルで最大14サイクル (化学療法と合わせて計2年間) まで続けられ、 主要評価項目にはdeficient MMR (dMMR) 集団とproficient MMR (pMMR) 集団それぞれにおける無増悪生存期間 (PFS)、 副次評価項目には全生存期間 (OS) と安全性などが設定された。
Doubletレジメン、 tripletレジメンともにTC療法に対するPFSの改善を示した。
Doubletレジメン
mPFS : 10.2ヵ月 (HR 0.71、 95%CI 0.57-0.89)
Tripletレジメン
mPFS : 15.1ヵ月 (HR 0.55、 95%CI 0.43-0.69)
一方で、 dMMR集団においてdoubletレジメンとtripletレジメンを比較したサブ解析では、 オラパリブの追加効果は示唆されず (HR 0.97、 95%CI 0.49-1.98)、 pMMR集団におけるサブ解析ではオラパリブの追加効果が示唆された (HR 0.76、 95%CI 0.59-0.99)。
この結果を受け、 dMMR集団においてはdoubletならびにtripletレジメンが、 pMMR集団においてはtripletレジメンのみが保険適用となっている。
dMMR集団、 pMMR集団ともにTC+PEM療法はTC療法に対するPFSの改善を示した。
dMMR
mPFS : 未到達、 HR 0.30、 95% CI 0.19-0.48
pMMR
mPFS : 13.1ヵ月、 HR 0.54、 95% CI 0.41-0.71
両試験の主要評価項目の対象はITT集団とdMMR/pMMR集団と異なっており、 両者の結果を直接比較することは難しい。 いずれにせよ、 両試験ともにそれぞれの主要評価項目を達成しており、 今後はアップデートされたOS結果の発表が期待される。
dMMR集団におけるTC療法の奏効割合は40.5%であったのに対し、 TC+Durva療法は71.4% (doublet) と73.0% (triplet) であり、 奏効期間の中央値 (median duration of response、 mDOR) はそれぞれ未到達 (doublet) と29.9ヵ月間 (triplet) であった。
また、 pMMR集団におけるTC療法の奏効割合は59.0%であったのに対し、 TC+Durva療法は59.4% (doublet) と61.2% (triplet) で、 mDORは10.6ヵ月間 (doublet) と18.7ヵ月間 (triplet) であった。
dMMR集団におけるTC療法の奏効割合は69.5%であったのに対し、 TC+PEM療法は77.9%で、 mDORはTC療法で4.4ヵ月間、 TC+PEM療法では未到達であった。
また、 pMMR集団におけるTC療法の奏効割合は51.5%であったのに対し、 TC+PEM療法は61.4%で、 mDORはTC療法で6.4ヵ月間、 TC+PEM療法では7.1ヵ月間であった。
MMR、 疾患ステータス、 地域についてのPFSサブグループ解析結果からは、 doubletレジメンでは地域がアジアである点、 再発である点の2点について、 tripletレジメンでは地域がアジアである点について、 TC療法に対するDUO-Eレジメンの有効性が乏しい可能性が示唆された。
MMR、 ECOG PS、 化学療法歴についてのPFSサブグループ解析結果からは、 dMMR集団ではすべての因子でTC療法に対するTC+PEM療法の有効性が示唆された。
一方で、 pMMR集団では化学療法歴がある点について、 TC療法に対するTC+PEM療法の有効性は乏しい可能性が示唆されている。
維持療法期における免疫関連有害事象 (irAE) の頻度は、 doubletレジメン、 tripletレジメンともに14%程度であり、 デュルバルマブにオラパリブを追加してもirAEは増加しないことが報告されている。
一方で、 有害事象による治験中止は6%から14%に増加しており、 その原因は主にオラパリブの血液毒性と考えられる。
これまでに婦人科癌領域で使用されたペムブロリズマブ単剤療法や複合免疫療法と比較しても相違ないirAEの結果であり、 dMMR集団とpMMR集団における結果においても明らかなirAEの相違は認められなかった。
Tripletレジメンの使用を判断するために、 ベンタナ OptiViewを用いたMMR IHC検査がコンパニオン診断として承認された。
また、 ad hocに実施されたPD-L1発現ステータスによる有効性のサブ解析にて、 PD-L1発現が陰性の患者ではTC療法に対するDUO-Eレジメンの効果が乏しい可能性が示唆されたため、 PD-L1検査に関するコンプリメンタリー診断が現在開発中である。
NRG-GY018試験ではDUO-E試験とは異なり、 コンパニオン診断やコンプリメンタリー診断は設定されていない。
一方で、 治療の効果や展望を検討するには、 IHC検査などによって患者ごとにMMRステータスを把握することが重要と考えられる。 今後は保険適用の整備等が重要になると推察される。

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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