寄稿ライター
1ヶ月前

こんにちは、 Dr.Genjohです。 新シリーズ 「検証 +3.09%の真実」 第3回は、 2026年度診療報酬改定の内容から、 これから生き残りやすい場所、 生き残りにくい場所について考えます。
厚生労働省から診療報酬改定に対する疑義解釈の文書が公表されました。 (2026/5/29付)
要約すると、 給料アップさせなさいと明示した4診療科よりもさらに良い手当を貰える診療科があっても良い。 ただし、 その割合は全診療科の2割までに留めること。
オペ数によるインセンティブなど、 すでに他科よりも良い給与が得られている診療科の減給は示唆されていません。 ただし、 4診療科の給与がトップクラスに位置することが求められます。
詳しくはコチラ
過剰なインフレで、 医師にとっての 「聖域」 は想像以上のスピードで失われつつあります。 乗り切るポイントは 「需給バランスに逆らわないこと」 です。
>>第2回はコチラ
「急性期機能拠点は人口20-30万人ごとに1ヶ所で充足する」
2025年8月に開かれた厚労省の地域医療構想に関する検討会¹⁾では、 こんな提言が飛び出しました。
「いやいやいや、 急性期機能を謳っている病院はもっと多い。 これが現実になったらいくつの病院が潰れるんだよ」 と当時の私は思っていました。しかし今回の改定では、 上記を前提とした記載が散見されます。 厚労省は本気です。

その一端は、 前回も触れた急性期病院Bの算定条件の中にあります。
「人口20万人未満の二次医療圏において、 救急搬送数が最大の医療機関であり、 かつ年間で1000件以上であること」 【図1】²⁾

この文言は、 急性期総合体制加算5に関わる部分にもあります。
「急性期総合体制加算5の要件は、 人口20万人未満の地域において救急搬送の受け入れを最も担う病院の特性に配慮したものとする」 【図2】¹⁾

DPCの基礎係数を算定する要件にも、 ほぼ同じ文言があり、 まとめて意訳すると下記になります。
「過疎地であっても、 その地域で救急搬送数No1の病院たった一つだけを、 急性期病院Bと認めてあげよう。 頑張っているから、 各種の加算をプレゼント!でもそのレースは人口20万人ごとで区切って行うから、 実質急性期病院は20万人に一つで十分ということだよ!」
つまり過疎地で、 急性期病院の統廃合が加速することは確定的です。 当然、 必要とされる医師の需要も当然目減りします。
急性期病院の勤務医の椅子取りゲームは、 さらに激化するでしょう。

ちなみに、 都会も他人事ではありません。
急性期病院A/Bの算定要件に、 救急搬送数と全身麻酔手術数が存在するため、 取り合いが発生します。 条件を達成できなかった病院から、 急性期病院の看板を下ろしていくことになるでしょう。
何より恐ろしいのは、 「この算定要件は厚生労働省の意向次第で容易に変わる」 ということなのです…。

急性期病院が絞られていく中で、 生存競争を勝ち抜きやすい存在とは何でしょう?それは、 「需要に対して供給が足りていない医療施設」 です。
ここに大きく関わる改定がありました。 「地域医療体制確保加算2」 の新設です【図4】。
具体的には、 労働がキツく、 若手医師から人気のないとされる4科 (消化器外科、 心臓血管外科、 小児外科、 循環器内科) を特別扱いするーー。 4科の医師の給与体系に、 特別な配慮をすることが算定要件になっています。
日本の医療界は従来、 全ての科の医師給与が画一化されていることが一般的でした。 時間外労働手当の多寡を除き、 基本給や手当に大きな差が生じることはありませんでした。
「その常識は終わりです。 診療科によって待遇に差をつけなさい」 ーー。 国が初めて介入を行った大改定といえます。

地域医療体制加算確保2で求められる 「医師個人へのインセンティブ額」 について、 具体的な言及はまだありません。
ただ、 特に医師不足が著しい外科に関しては、 さらに 「外科医療確保特別加算」 が新たに設けられました。 【図5】。
長時間かつ高難度の手術で算定される点数のうち、 4.5%(15%×30%)をダイレクトに外科Drへのインセンティブに充てるよう明記されています。 不人気な科で過酷な労働に耐えてきた外科Drにとっては、 報われる瞬間がやっと到来したと言ってよいでしょう。
とはいえ、 全体の原資が不足している以上、 不人気科へのインセンティブは他の部分から移植せざるを得ません。 財源として給与を削減されるターゲットがどこに設定されるかは、 想像に難くないと思います。
なお、 上記の特別加算をするためには、 「外科経験5年以上の常勤医師が6人以上配属されている施設」 である必要があります。
「外科Drだから全員勝ち組」 ではありません。 競争に打ち勝ち、 集約化された急性期病院の外科Drとして選ばれる必要があります。

需要に対して供給が追いついていないのは、 不人気科だけではありません。
Drが集まらない不人気な僻地医療です。
【図6】の 「人口の少ない地域等での医療提供機能確保」 を見れば一目瞭然です。 僻地での医療崩壊を防ぐための新たな加算が複数設けられています。
一方、 外来医師過多区域において人気の無い業務(学校医、 健診など)を行わない場合は、 各種加算が取得できないように、 懲罰的な対応がなされます。
「医師が余っている都会の開業医はもういらないから塩対応にするよ。 僻地に飴を置いておいたので、 そちらで仕事をしてね」 と、 厚生労働省は仰せです。

では、 具体的に厚遇が期待される地域とはどこでしょう?
【図7】は、 厚生労働省が医療過疎地と認定した39地域です。 医療過疎地の規模感、 そこで働くイメージはつきますでしょうか。

僻地で求められる働き方のありかたは、 医療提供機能連携確保加算の算定要件から見えてきます【図8】。
僻地病院への非常勤勤務による応援(不足している専門医の派遣等?)、 僻地病院の医師の休暇を穴埋めするための代診、 施設などの巡回診療、 オンライン診療等です。
全体として、 僻地の医療者を増やすことが困難なので、 既存の医療資源でも現場を回せるように配慮した内容が多いように感じられます。
非過疎地の医師の応援を強化したり、 オンライン診療で手間を省いたりすることで、 業務を効率化することが求められています。
¹⁾厚生労働省 : 第3回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会(2025.8.27)
²⁾厚生労働省 : 令和8年度診療報酬改定説明資料等について 「0_令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】」

Xアカウント : @DrGenjoh

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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