【解説】慢性進行性肺アスペルギルス症 (CPPA) の診断のポイント
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亀田総合病院

1年前

【解説】慢性進行性肺アスペルギルス症 (CPPA) の診断のポイント

【解説】慢性進行性肺アスペルギルス症 (CPPA) の診断のポイント
アスペルギルス症は、 アスペルギルス属 Aspergillusの真菌によって引き起こされる通常は肺の感染症です。 今回は慢性肺アスペルギルス症 (CPPA) の分類と診断に焦点をあてて解説します。

1.肺アスペルギルス症の分類

肺アスペルギルス症は、 その病態から慢性型、 急性型 (侵襲型)、 アレルギー型に大別されます。 慢性型は、肺の器質的病変にアスペルギルスが腐生することによって生じます。

慢性肺アスペルギルス症 (CPA)

慢性肺アスペルギルス症 (chronic pulmonary aspergillosis) はのように分類されます¹⁾。

表 慢性肺アスペルギルス症の分類
【解説】慢性進行性肺アスペルギルス症 (CPPA) の診断のポイント
参考文献1) を参考に作成
後者2つの疾患 (CCPAとCNPA) の臨床的鑑別は困難であり、治療に関しても明確な差異がないので、 両者を統合した疾患群が、 慢性進行性肺アスペルギルス症 (CPPA:Chronic progressive pulmonary aspergillosis) です。 

2. CPPAについて

診断

CPPAの臨床所見として、以下のようなものが挙げられます。

① 1カ月以上の咳嗽、 喀痰、 体重減少などの臨床症状
② 慢性肺アスペルギルス症に矛盾しない画像所見
③ 炎症所見
④ 抗菌薬に反応性しない

呼吸機能検査では拘束性換気障害を呈することが多いです。

上記の臨床所見があれば (国際ガイドラインでは3カ月以上の症状持続期間で定義) ²⁾、 あとは、 血清・病理・培養のいずれかでアスペルギルスを確認できれば診断が可能です¹⁾。

画像所見

まず基礎として既存肺に嚢胞や空洞が存在します。 これに新たな空洞の出現、空洞の拡大、胸膜肥厚の進行、空洞壁の肥厚 (空洞周囲浸潤影の拡大) 、鏡面形成、真菌球様の陰影の増悪を認めます。

多くの場合は嚢胞や空洞内に菌球を認めますが、 嚢胞や空洞の壁肥厚、 拡大、 周囲の浸潤影が出現するだけの場合もありますから注意しましょう。 は当院で経験したCPPA症例ですが、 菌球は認めず、 空洞の壁肥厚と拡大、 周囲の浸潤影のみを認めました。

図 CPPAの胸部CT所見。 壁の厚い空洞の拡大を認める。
【解説】慢性進行性肺アスペルギルス症 (CPPA) の診断のポイント
中島啓氏提供

血清診断

アスペルギルスは培養検出率が低く、 気管支鏡も困難な場合もあります。

よって、 血清診断として、 アスペルギルス抗体 (IgG) が、 感度と特異度が高く有用で、 国際ガイドラインでも診断基準に含まれています³⁾。 最近は本邦でも使用可能となりました。 202人の患者を対象とした研究では、 慢性肺アスペルギルス症の診断において、 アスペルギルスIgGがアスペルギルス抗原 (ガラクトマンナン抗原) よりも診断能が高かったことが報告されています⁴⁾ (感度と特異度 IgG 78.6%、 94.4% vs GM抗原 71.4%, 58.1%)。

ただし、 現段階ではアスペルギルス抗体は自費検査となりますので、 患者さんには必要性を説明の上、 自費検査であることを理解頂いた上で検査を行いましょう。 今後の保険収載が待たれるところです。

参考文献

  1. 深在性真菌症のガイドライン作成委員会。 深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014. 協和企画 2014年 東京
  2. Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Aspergillosis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2016;63(4):e1-e60. PMID: 27365388
  3. Chronic pulmonary aspergillosis: rationale and clinical guidelines for diagnosis and management. Eur Respir J. 2016 Jan;47(1):45-68. PMID: 26699723
  4. Prospective study of the serum Aspergillus-specific IgG, IgA and IgM assays for chronic pulmonary aspergillosis diagnosis. BMC Infect Dis. 2020 Jun 5;20(1):396. PMID: 32503442

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