HOKUTO編集部
8ヶ月前
発熱性好中球減少症 (FN) における癌薬物療法時の感染対策について、 日本臨床腫瘍学会による 「発熱性好中球減少症 (FN) 診療ガイドライン改訂第3版」 が2024年2月25日に発刊された。 第21回日本臨床腫瘍学会学術集会では、同ガイドライン改訂第3版作成部会長で、 帝京大学附属溝口病院第四内科常勤客員教授の吉田稔氏が、主な改訂ポイントを解説した。
吉田氏は、 主な改訂ポイントとして、 以下の2点を取り上げた。
① アルゴリズム 「FN患者に対する初期治療 (経験的治療) 」 の変更
② クリニカル・クエスチョン (CQ) の変更・追加・統合
1990年、 米国感染症学会 (IDSA) が最初のFN診療ガイドラインを発表した。 本邦では、 2012年に日本臨床腫瘍学会が初版を作成。 2017年に改訂第2版が刊行され、 今回は7年ぶりの改訂で第3版の刊行に至った。
近年の実地臨床では免疫チェックポイント阻害薬や新規分子標的薬の導入、 細胞療法の開発などが進み、 さらに日本では高齢患者数の増加も相まって、 従来よりも多くの患者でFN発症リスクが増加している。このような情勢において、 ガイドラインがどのように評価され、 実地臨床で利用されているかを調べることは極めて重要である。
そこで、 2020年に同ガイドライン改訂第2版の遵守状況について、 日本がんサポーティブケア学会、 日本臨床腫瘍学会、 日本乳癌学会、 日本血液学会の医師会員800名を対象に、 厚生労働科研費/がん対策推進総合研究事業研究班 (研究代表 全田貞幹氏) によるアンケート調査が行われた。 その結果、 FNの重症化予測であるMASCCスコアの利用率が予想以上に悪く、 同スコアを用いた低リスク患者の選択の遵守率も低かった。 こうした背景から、 改訂第3版を作成するに至ったという。
改訂第3版において提示されているアルゴリズムは第2版と同様、 以下の3つである。
ただし、 このうち1については、 まず急性白血病などの高リスク患者をリスク評価の対象外とし、 低リスク患者の中から外来治療が可能なFN患者を選別するためのアルゴリズムを新たに提案したため、 大幅な変更点があった。
MASCCスコア単独での評価を見直し
改訂第2版では、 リスク分類として、 MASCCスコアによる評価が導入されている。 同スコアは国際的にも多く使用されているが、 先述したアンケート調査の結果、 日本ではMASCCの遵守率が高くないことが示されたため、 低リスク患者を選別するためのアルゴリズムをより詳細に解説することとした。 改訂第3版は改訂第2版に比べて項目が増え、 より詳細な評価を行うこととされた。
改訂第2版よりも慎重なリスク分類が必要に
改訂第3版では、 ①疾患・がん薬物療法による評価で高リスク患者を除外し、 該当しない患者は②身体的リスク、 ③心理・社会的リスクについてそれぞれ該当項目を検討し、 FNリスクを分類することとされた。
すなわち、 MASCCスコアのみで外来治療の可否を判断することがないよう、 3段階に分けて慎重に評価を行うアルゴリズムとなっているという。
初期治療が効かなかった場合の治療法として、 改訂第2版に基づくアルゴリズムでは、 耐性菌に対する治療と抗真菌薬による経験的治療 (empiric therapy) が行われてきたが、 改訂第3版では耐性菌への対応を具体化し、 抗真菌薬についても早期治療 (pre-emptive therapy) 、 または経験的治療を行うこととされた。
改訂第2版でのCQ5およびQ6は1つのCQに統合され、 CQ10は削除された。 また改訂第3版では新規に4項目 (CQ8、 9、 11、 20) が追加され、 全22項目となった。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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