HOKUTO編集部
6ヶ月前
本連載は4人の腫瘍内科医による共同企画です。 がん診療専門医でない方でもちょっとしたヒントが得られるようなエッセンスをお届けします。 第12回は虎の門病院・三浦裕司先生から、 「抗がん薬を使うかどうかを患者さんと話すときの考え方」 です! ぜひご一読ください。
今回は、 患者さんと 「抗がん薬という手段を使うかどうか」 について相談する際の考え方について、 下図に沿ってお話ししたいと思います。
まずは、 医学的に 「できるかどうか」 について検討します。
これは、 いわゆる投与の禁忌になるような状態 (全身状態が極端に悪い、 適切な臓器機能が保たれていない、 感染症などの合併症がある) がないかどうかを確認することです。
医学的に問題がなく投与可能である場合、 次に検討することは、 抗がん薬治療という 「手段」 を用いることで、 患者さんの 「総合的なベネフィットにつながるかどうか」 を検討することです。
ここには、
①患者さんの希望・目標
②医学的なベネフィットとリスクのバランス
という2つの因子が存在します。
そして、 我々の考えるベネフィットとリスクの程度が、 患者さんの考えるそれと一致するとは限らないため、 医学的なベネフィットとリスクを、 患者さんの希望・目標に照らし合わせていく必要があります。
また、 医学的なベネフィットとリスクには幅が存在し、 目の前の患者さんが、 そのうちのどこに当てはまるのかは、 治療を始めてみないと分かりません。 そのため、 最高パターンから最悪パターンまで説明した上で、 患者さんの希望・目標に合った落とし所を見つけていくという作業が必要です。
💬腫瘍内科医のTips
このプロセスがShared decision making (SDM)と呼ばれるものの一部だと思います。
同プロセスの結果、 抗がん薬という手段が患者さんの総合的なベネフィットに沿えば使うことを選択し、 沿わなければ使わないことを積極的に選択すればよいと思います。
💬腫瘍内科医のTips
抗がん薬による治療を選択しないことは、 必ずしも 「消極的」 な選択ではない。
(中編に続く)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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