HOKUTO編集部
4ヶ月前
米国臨床腫瘍学会 (ASCO) 2024 の小細胞肺癌 (SCLC) 領域における注目演題について、 関西医科大学呼吸器腫瘍内科の山中雄太先生にご解説いただきました。
本年のASCOは肺癌診療をしている医師にとって"当たり年"で、 肺癌セッションの会場は多くの人で溢れ、 入場制限が起こるなど、 昨年よりも盛況だったと思う。 アジアからの発表も多く、 会場全体はアジア人が非常に多かった印象が残っている。
非小細胞肺癌 (NSCLC) 領域で注目演題であったLAURA試験・CROWN試験・ADRIATIC試験なども興味はあるものの、 関西医科大学附属病院ではSCLCの患者割合が多く、 普段からSCLCの治療を多く行っているため、 今回はSCLCの発表を見て参りたい。
進展型 (ES) SCLCに対し、 IMpower133試験の結果に基づいた抗PD-L1抗体アテゾリズマブ+プラチナベースの化学療法に抗VEGF抗体ベバシズマブを追加する第Ⅲ相試験。 全生存期間 (OS) 中央値はimmatureであるが、 ベバシズマブ上乗せ群はプラセボ群に比べ、 カプランマイヤー曲線は下回っていた。
1次治療後に再発もしくは病勢進行を認めた遺伝子変異量 (TMB) highのSCLCに対し抗PD-1抗体ニボルマブ+抗CTLA-4抗体イピリムマブを投与する、 ドイツで行われた第Ⅱ相BIOLUMA試験である。 主要評価項目の客観的奏効率 (ORR) は11%となっており、 BEAT SC試験も含めて、 SCLCの治療はやはり免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) や血管新生阻害薬を追加しても劇的な生存期間の改善効果が得にくいと考えさせられる結果だった。
上記2つの発表以外において、 poster sessionではES-SCLCに対する化学療法+免疫チェックポイント阻害薬のリアルワールドデータの発表が多かった。 しかし、 どの発表もSCLCの治療を変え得るようなものではなく、 SCLCに対する免疫チェックポイント阻害薬の治療効果の限界を感じさせられるような印象だった。
分子サブタイプ別のB7-H3発現と他の免疫関連遺伝子に関する多次元解析
SCLC/NECに対するDLL3標的二重特異性T細胞誘導抗体の安全性
上記2つの演題発表は非常に期待が寄せられる内容だった。 いずれも免疫チェックポイント阻害薬とは異なる標的療法 (B7-H3を標的とした抗体薬物複合体、 およびDLL3を標的とした二重特異性 T 細胞誘導抗体) であり、 いずれも現在承認に向けた臨床試験 (治験) が実施中である。
当院では両薬の臨床試験に参加しているが、 治療効果の肌感は非常に良いものである。 これらの新規薬剤が難攻不落のSCLCにどのようなインパクトを与えるかで、 数年後のSCLCの標準治療が大きく変わっていく可能性は、 十分にあり得ると考える。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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