インタビュー
23日前

2026年に創業80年を迎えた医療法人明峰会(福井県敦賀市)。祖父、父から続く3代目理事長の木村晃朗さんは、医療・介護・生活支援を一体的に展開するとともに、行政や多職種との関係も築いてきた。いま見据えるのは、地域全体で支え合う仕組みづくりだ。
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夜明け前、木村さんは家を出る。ランニングで天筒山の中腹に位置する山の神神社まで駆け登り、その足で気比神宮へ向かい、参拝する。自宅に戻るまで約5キロ。20数年にわたり、雨の日も風の日も、雪の日も続けてきた朝の習慣だ。敦賀の町並みを見渡しながら、こう祈る。
「皆がいつまでも元気で、仲良く、楽しく暮らしていけますように、どうぞお見守りください」

以前は家族や職員の無事を願っていた。経営者として担う役割が増えるにつれ、願う相手は敦賀で暮らす人々へと広がった。
「お参りするだけでも、『今日は大丈夫だ』という安心感があるんです」
突然法人を背負い、多くの職員や患者を預かる立場となった。心を整える時間は、今も欠かせない支えとなっている。
2009年に明峰クリニックを開設した後も、地域に必要な機能づくりは続いた。高齢独居や老々介護が多い市内の状況を考慮して、2013年に認知症高齢者グループホームを開設。自立して生活できる高齢者に対しては、2018年にサービス付き高齢者向け住宅を整備した。
明峰クリニックの待合室からは、ガラス越しに運動する人たちの姿が見える。2011年に併設したメディカルフィットネスだ。これは、患者の声から生まれた。

「でも先生、そんなところ、近くにないやんか」
健診の結果を受けて木村さんが身体を動かすよう勧めても、「近くに通える施設がない」と話す人がいた。そこで、スポーツインストラクターが常駐するメディカルフィットネスを開設した。
医療、介護、予防を切れ目なく支えたいという思いは、施設の外にも広がっている。行政や自治会が開く健康教室に法人の理学療法士らを派遣し、体操や脳トレの方法を伝える。毎年秋にはクリニックの駐車場で「めいほう祭り」を開催しており、施設の利用者や患者・家族に加え、地域住民も訪れる催しとして定着している。

こうして地域とのつながりを育む一方で、介護事業を取り巻く環境は厳しさを増しているという。直面する物価高や人材不足に加え、高齢者数がピークに達する「2040年問題」を見据えると、敦賀市では事業所の飽和も懸念される。木村さんが目指すのは、競争ではなく、共存による地域づくりだ。
「自分たちだけが勝つのではなく、皆で手を取り合っていきたい」
各事業所の強みや課題を踏まえ、それぞれが役割を補い合いながら、地域全体で介護を支える仕組みを構築したいと考えている。
その土台となっているのが、約20年前から続く多職種連携だ。敦賀市在宅医療在宅介護連携推進協議会が主催する「顔の見える会」は発足当初、40~50人ほどの規模だったが、現在では医師や看護師、薬剤師、ケアマネジャー、介護福祉士ら約200人が集う研修会へと発展した。
「最初は、医師との距離を感じる方もいました」
当時は、各職種が医師とコミュニケーションを取りたいと思っていても、「忙しいのではないか」と遠慮するなど、気軽に声をかけ合える関係にはまだ時間が必要だったという。それでも、顔を合わせて対話を重ね、互いの役割や考え方への理解を深めてきた。築かれた信頼関係は、敦賀市の地域包括ケアを支える基盤の一つとなっている。
創業80年を迎えた今年、長女が医師として診療に加わり、次女、三女も医学部で学ぶ。法人承継が少しずつ現実味を帯びる一方、木村さんは血縁にこだわらず、地域への思いを受け継ぐ人が育つことを望む。
地域医療を志す若い医師へ伝えたいことを尋ねると、答えは明快だった。
「まず、人を好きになることです」


編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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