Yu XQらは、 肺癌患者を対象に、 長期生存と性差の関係を検討する前向きコホート研究を実施した. 結果、 性差による生存期間延長は、 既知の予後因子によってほぼ説明できることが明らかとなった. 本研究はJ Thorac Oncol誌において発表された.
背景
- 女性は男性よりも肺がん診断後の生存期間が長い傾向があるが、 この性差の潜在的な要因はまだほとんどわかっていない.
- オーストラリアの大規模な前向きコホートにおいて、 肺癌生存の性差に関連する因子を定量化した.
研究デザイン
- 45 and Up Studyの参加者で、 肺癌と診断された患者を対象に追跡調査した.
- がんレジストリ、 入院記録、 救急科記録、 政府助成医療サービスや処方薬の診療報酬データと結びつけた質問票のデータを用いて予後因子を同定した.
研究結果
- 女性488名と男性642名が肺癌と診断された.
- 女性の方が生存期間は有意に長かった.
- 中央値 女性 1.28年 vs. 男性 0.77年
- 男性のハザード比 HR=1.43、 95%CI 1.25-1.64、 p<0.0001) .
- 組織型、 診断時の病期、 治療内容、 喫煙状況などの主要な予後因子で個別に評価しても、 生存率の性差は残った.
多変量解析の結果
- 多変量解析の結果、 治療関連因子が生存率の差の原因の50%を占め、 続いて生活習慣 (28%) と腫瘍の特徴 (26%) が占めることが明らかになった.
- 既知の主要な予後因子すべてで調整した結果、 男性の過剰リスクは80%以上減少した (HR=1.06、 95% CI: 0.96-1.18、 p = 0.26).
結論
- コホートにおける肺癌生存の性差は、 既知の予後因子によってほぼ説明された.
- 治療の嗜好、 選択肢、 アクセスにおける性差を調査する機会があることを示している.
原著
Yu XQ、 et al、 Evaluating Prognostic Factors for Sex Differences in Lung Cancer Survival: Findings From a Large Australian Cohort. J Thorac Oncol. 2022 May;17(5):688-699.PMID: 35124253