【専門医寄稿】ASH2023注目トピックス (4)-同種移植特集-
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HOKUTO編集部

4ヶ月前

【専門医寄稿】ASH2023注目トピックス (4)-同種移植特集-

【専門医寄稿】ASH2023注目トピックス (4)-同種移植特集-
2023年12月に開催された米国血液学会 (ASH 2023) について、 4回に渡り注目トピックスを紹介します。 最終回となる第4回は、 大阪国際がんセンター・藤重夫先生に、 同種造血幹細胞移植に関する注目演題6題についてご解説いただきました。

移植後感染へのBCV IV

移植後アデノウイルス感染症へのBCV IVの安全性と有効性

(ASH2023 Abstract#112)

アデノウイルス感染症に対する抗ウイルス薬brincidofovir静注 (BCV IV) の臨床試験結果です。 

もともとはcidofovirが有効ではないかということでしたが、 腎障害の毒性が特に問題となり、 その点を解決する薬剤としてbrincidofovirの内服薬が検討されました。 アデノウイルス感染症に対する同薬の有効性は良好でしたが、 消化管の副作用が問題となりました。 その解決に向けてBCV IVの開発が進められ、 今回の結果では消化管障害も軽減されている印象です。 

本邦ではいずれの薬剤も保険適用外の状況でありますが、 アデノウイルス感染症は同種造血幹細胞移植後の致死的な合併症の1つであり、 BCV IVの開発が本邦でも進むことを期待します。

移植後生着不全へのemaplaumab

同種移植後生着不全の予防・治療におけるemaplaumabの有効性

(ASH2023 Abstract#114)

同種移植後の免疫学的な生着不全に対する治療薬としてのIFNγ阻害薬emaplaumabの有効性を検討した研究です。 

生着不全に対する直接的な薬剤というのはほぼなかったと理解していますが、 血球貪食症候群に用いられるようなemaplaumabが今回用いられるのは大変興味深い研究テーマです。 生着不全の場合には、 本当にその後血球が回復してくるのか否か予想が難しいことも多く、 本研究の解釈も難しいところですが、 血球貪食症候群のようなメカニズムが作用していることは、 程度の大小はあれど関与していると考えられ、 本薬剤の使用は理にかなっているのかもしれません。

移植前処置としてのイノツズマブ オゾガマイシン

再発CD22陽性リンパ性悪性腫瘍の移植前処置にInO追加で生存期間改善

(ASH2023 Abstract#233)

再発のCD22陽性リンパ性悪性腫瘍に対する同種造血幹細胞の前処置に、 抗CD22抗体薬物複合体イノツズマブ オゾガマイシン (InO) を加えるという大変チャレンジングな治療戦略でしたが、 意外と肝中心静脈閉塞症/類洞閉塞症候群 (VOD/SOS) のリスクは高くないようでした。

前処置がフルダラビン/ベンダムスチン/リツキシマブという特殊なレジメンを用いている点も影響しているかと予想され、 他の通常の前処置でどのような結果が出るかは今後の課題といえるでしょう。

GVHDに対するルキソリチニブ

第II相多施設共同試験

高齢AML/MDSに移植後ルキソリチニブ投与でGVHD発生率が減少

(ASH2023 Abstract#653)

JAK阻害薬ルキソリチニブを移植片対宿主病 (GVHD) の予防に使ってしまおうという臨床試験の結果です。

全体的な結果としてGVHDの頻度は低く、 特に慢性GVHDで治療を要するような症例が低頻度に抑えられていたのは魅力的といえます。 問題点としては、 同薬が同種移植後45日頃からの開始となっており、 結果的にそれまでに急性GVHDを発症してしまっている例が認められた点が挙げられます。

REACH3試験

ルキソリチニブが慢性GVHDの長期予後を改善

(ASH2023 Abstract#654)

慢性GVHDに対するJAK阻害薬ルキソリチニブの有効性を評価した無作為化比較試験の3年後のフォローアップデータが報告されました。 

基本的にはこれまでの報告と同じく、 ルキソリチニブ群はコントロール群と比べて慢性GVHDのコントロールが良好でした。 ただし、 高い奏効率を示すものの、 奏効例でも部分奏効 (PR) までの症例が多いという結果であり、 完全に慢性GVHDを制御することはなかなか難しいようです。

再発・難治性非ホジキンリンパ腫

Astral試験

再発・難治性非ホジキンリンパ腫への同種移植、 病勢コントロールの可能性は?

(ASH2023 Abstract#231)

再発・難治性の進行悪性リンパ腫に対する同種造血幹細胞移植に関する前向き試験の結果です。 

非常に厳しい疾患対象ではあったものの、 長期的な生存が得られる例は少なからず認められ、 長期的な疾患コントロールを期待できる1つの治療戦略であることが再確認されています。 しかし、 治療関連死亡が特に1年以内で多く、 前処置の強度等は再検討を要するものと考えられます。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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