メイヨークリニック感染症科 松尾貴公
4日前
Effect of Preoperative Antibiotic Therapy on Operative Culture Yield for Diagnosis of Native Joint Septic Arthritis
研究デザイン
後ろ向きコホート研究
研究期間
2012年1月~2021年12月
対象施設
米・Mayo Clinic
対象患者
年齢18歳以上の患者
化膿性関節炎と診断され、 術前の関節液培養 (POC*¹) と術中の培養 (OC*²) が提出された患者
除外基準
追跡不能、 データ不十分、 人工関節関連感染、 化膿性関節炎以外の確定診断、 Mayo Clinic以外で受けた治療
主要評価項目
術前抗菌薬投与が、 術中培養の検出率に与える影響
副次評価項目
抗菌薬の投与量や投与タイミングの影響
患者背景
対象患者は299例 (321関節) であり、 年齢中央値は62.0歳 (IQR 52.7–72.3歳)、 62.9%が男性であった。
また、 単関節の感染が88.3%であり、 感染部位は膝 (41.1%)、 肩 (13.1%)、 足首 (10.9%) が多かった。
術前抗菌薬の投与と培養検出率
術前に抗菌薬を投与した患者は255例 (275関節)、 投与しなかった患者は44例 (46関節) であった。
抗菌薬投与群の培養検出率は、 術前培養 (POC) の68.0%に比べ、 術中培養 (OC) では57.1%と10.9%㌽の有意な減少がみられた (p<0.001)。
抗菌薬非投与群では術前培養 (POC) が60.9%、 術中培養 (OC) が67.4%であり、 両者に有意差はみられなかった (p=0.244)。
ロジスティック回帰解析結果
術前抗菌薬投与は、 術中培養の検出率を有意に低下させた (OR 2.12、 95%CI 1.24–3.64、 p=0.006)。
抗菌薬の投与量および投与期間が増加するほど、 培養陽性率は低下した (p<0.001)。
病原体の同定
メチシリン感受性黄色ブドウ球菌 (MSSA) が最多であった。 また、 抗菌薬の先行投与によりStreptococcus属の陽性率が特に低下した。
化膿性関節炎の起因菌同定では、 抗菌薬開始前に血液培養に加えて関節穿刺の培養の提出が推奨されています。
しかし、 術前の抗菌薬がどのくらい術中の組織培養に影響を及ぼすかどうかは明らかではありませんでした。
本研究では、 術前に抗菌薬を投与することで術中の培養検出率が低下することが示されました。 特に、 抗菌薬の投与量および投与期間が増加するほど培養陽性率が低下することが示されました。
したがって、 免疫不全患者や敗血症、 ショックなど急激に進行するリスクがなければ、 可能な限り抗菌薬開始を待ち、 血液培養と関節液培養を提出することが推奨されます。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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