HOKUTO編集部
2年前
〔編集部より〕関節リウマチ薬物治療において第一選択薬とされるメトトレキサート (MTX) の使用について、 『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き 2023年版』が今年(2023年)3月に発刊されました。 ここでは、 亀田メディカルセンター リウマチ・膠原病・アレルギー内科の小森宏太郎氏に、 第67回日本リウマチ学会 (2023年4月24〜26日、 福岡市) のシンポジウム「改訂MTX診療ガイドとRA関連LPDの診断と管理の手引きを踏まえたMTXの適正使用」での発表の内容の一部をご紹介いただきます。
『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き 2023年版』で追加・変更された「MTX皮下注射製剤を含めたMTXの用法・用量」について、 北里大学膠原病・感染内科学教授の山岡邦宏氏の解説による主な改訂ポイントを紹介する(関連記事「関節リウマチ関連リンパ増殖性疾患(RA-LPD)の診断と管理」「『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き』4つの改訂ポイント」。
上記の改訂ポイントのうち、 ここでは皮下注製剤の追加に関して大きく取り上げる。
MTXの皮下注製剤に関してはすでに海外には認可されているが、 2022年9月に公表された日本人を対象とした経口投与8mg/週とMTX皮下投与7.5mg/週でのランダム化比較試験¹⁾にて、 評価項目となる投与開始後12週時の米国リウマチ学会コアセット改善20%以上 (ACR20) 反応率で同程度の有効性が認められた。 そして今回、 2022年11月に新たに薬価収載されたMTX皮下注製剤 (メトジェクト®) に関する内容が追加となった。
特に以下の2点が重要となる。
表1. MTX経口投与→皮下投与の用量の目安
特に2の背景としては、 以下の結果が報告されている。
海外のデータでは皮下投与では経口投与と比べてAUC・TMAX・CMAXが平均2〜1.3倍の増加を示した。
表2. 外国健康成人各14例にMTX7.5mgまたは15mgを単回経口投与または皮下投与したときの薬物動態パラメータ²⁾
また日本人の関節リウマチ患者のデータで10mg皮下投与時のAUCが、 外国人の15mg皮下投与時のAUCよりも高い。
表3. 日本人患者6例にMTX10mgを皮下投与したときの薬物動態パラメータ
それゆえ、 経口投与と同用量の皮下投与ではMTXを増量していると考えられ, 経口投与からスイッチする場合は表1の用量が推奨されている。
そのほか、 同量の経口投与と皮下投与を比較した海外のランダム化比較試験において、 関節リウマチのエンドポイントにおいて皮下投与では有効性が向上したとの報告もあり³⁾、 経済的負担などで生物学的製剤が使用困難な患者においては、 MTXの経口投与から皮下投与への切り替えという選択肢が有用となる可能性がある。
また有害事象という点においては皮下投与では吐き気などの消化器症状が減少した¹⁾。 さらに 矢嶋ら⁴⁾の報告では、 MTXの経口投与に関して、 患者の72%で服薬アドヒアランスが十分でないことを報告している。
投与形態を変更することで、 患者のコンプライアンスや忍容性を高め、 安定した効果を期待できる可能性がある。
亀田総合病院
リウマチ膠原病アレルギー内科
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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