【亀田呼吸器2023】咳嗽の診かた (中島啓先生)
著者

亀田総合病院

4ヶ月前

【亀田呼吸器2023】咳嗽の診かた (中島啓先生)

【亀田呼吸器2023】咳嗽の診かた (中島啓先生)
本コンテンツは昨年11月23日に開催された 「亀田総合病院呼吸器セミナー2023」 の内容をまとめたものです。 呼吸器領域の代表的な疾患についてわかりやすく解説した内容となりますので、 是非臨床の参考としていただけば幸いです。 

講演情報

講師 : 中島啓先生

亀田総合病院呼吸器内科主任部長

咳嗽の分類

咳嗽は持続期間で頻度の高い鑑別診断が変わる。

【亀田呼吸器2023】咳嗽の診かた (中島啓先生)
中島啓. レジデントのための呼吸器診療最適解 医学書院 2020 p59 表1より引用改変

急性咳嗽の鑑別診断

▼急性咳嗽の場合、 まずCOVID-19を疑う。

インフルエンザ・SARS-CoV-2の検査キットでスクリーニングを行う。

▼COVID-19が否定的な場合はかぜ症候群を疑う。

咳嗽、 咽頭痛、 鼻汁の3症状があるかを確認。 ピークを越えていれば胸部X線検査は行わず、 対症療法でよい。

病歴の聴取

急性咳嗽の中には遷延性咳嗽、 慢性咳嗽を呈する疾患の初期段階の患者が含まれることがあるため病歴を確認することも重要である。

【亀田呼吸器2023】咳嗽の診かた (中島啓先生)

慢性咳嗽の鑑別診断

慢性咳嗽の鑑別診断は、 胸部X線で異常を認めるものと、 異常を認めないものに分類すると整理しやすい。

胸部X線で異常を認める場合

【亀田呼吸器2023】咳嗽の診かた (中島啓先生)
中島啓. レジデントのための呼吸器診療最適解 医学書院 2020 p62 表3を参考に作成

胸部X線で異常を認めない場合

咳喘息、 アトピー咳嗽、 COPD、 胃食道逆流症 (GERD)、 後鼻漏は慢性咳嗽の5大疾患とされる。

【亀田呼吸器2023】咳嗽の診かた (中島啓先生)
中島啓. レジデントのための呼吸器診療最適解 医学書院 p63 表4を参考に作成

頻度は高くないが押さえておくべき

【亀田呼吸器2023】咳嗽の診かた (中島啓先生)
中島啓. レジデントのための呼吸器診療最適解 医学書院 p63 表4を参考に作成

咳嗽の治療

 咳嗽は以下のように対応していくとよい。

  • 各疾患に疑わしい所見 → 特異的治療
  • 胸部X線に異常がない → 治療的診断
  • 同時に複数の鑑別診断が挙がる → 最も疑わしい疾患から治療

咳喘息の治療

【症状】Wheezeがなく、 咳だけの喘息

【検査】1秒率低下は認めないことが多い

治療はSABAが有効

喘息の治療

【症状】喘鳴を伴う咳嗽

【検査】問診チェックリストに従い評価

    画像で器質的疾患除外

治療はICS/LABAを投与、 喘鳴がない場合は低用量ICS/LABAまたICS単剤で経過観察。 治療に反応があり、 かつ 「ICS/LABA前に喘鳴がある」 あるいは 「再現性あり」 なら、 喘息と診断

アトピー咳嗽の治療

【症状】中枢気道に好酸球性炎症→咳感受性亢進

【検査】問診で喘息以外のアレルギー疾患聴取

    血液検査で以下を確認する

  • 末梢血好酸球 : 増加
  • 血清総IgE値 : 上昇
  • 特異的IdE抗体 : 陽性
  • アレルゲン皮内テスト : 陽性
SABAは無効で、 抗ヒスタミン薬が有効

GERDの治療

【症状】胃酸や胃内容物の食道への逆流

【検査】以下の特徴を有する慢性咳嗽か確認

  • 胸やけ・呑酸などの胃食道逆流現象 (GER) の食道症状を伴う
  • 咳払い、 嗄声、 咽頭症状異常感など、 GERの咽頭症状を伴う
  • 咳が会話、 食事中、 体動、 就寝、 起床直後、 上半身前屈、 体重増加などのタイミングで悪化 (夜間は少ない場合が多い)
  • 咳き込んで嘔吐してしまう
  • 咳の原因となる薬物の服用がなく、 副鼻腔気管支症候群 (SBS) などの治療が無効、 あるいは効果不十分。 特に咳喘息の治療で夜間の咳は改善したが昼間の咳が残存するような場合
治療は、 プロトンポンプ阻害薬 (PPI)、 消化管運動機能改善薬、  肥満・食生活の改善 (これらの治療により症状が改善すればGERDと診断)

COPD、 喫煙の治療

【症状】 咳、 痰、 労作時の呼吸困難など。

【検査】問診 : 20pack-years以上の喫煙歴

    スパイロメトリーによる肺機能検査

治療は、 LAMAあるいはLABA、 LAMA+LABAの併用、 LAMA+LABA+ICSの三剤併用、  非侵襲的陽圧換気 (NPPV) など

後鼻漏の治療

【症状】鼻汁が前方から出ず、 咽頭へ (慢性副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎が基礎として多い)

【検査】後鼻漏の訴え、 既往歴

  • 鼻の奥から鼻汁が下りてくる感じ、 垂れてくる感じなどの訴え
  • 従来型の副鼻腔炎、 好酸球性副鼻腔炎、 季節性アレルギー性鼻炎、 通年性アレルギー性鼻炎、 慢性鼻咽頭炎の既往

その他、 舌圧子による中咽頭、 鼻咽頭ファイバースコープによる後鼻漏の確認など

PPI、 気管支拡張薬が無効。  既往歴の疾患に準じた治療 (PPI、 気管支拡張薬が無効で、 既往歴の疾患に準じた治療で軽快した場合は後鼻漏と診断)

原因不明の咳嗽

ガイドラインに従った経験的治療を行って、 コデインリン酸塩やデキストロメトルファン、 麦門冬湯などの漢方薬を用いても改善が困難であり、 その他の慢性咳嗽のスクリーニングを終えたら、 原因不明の慢性咳嗽 (UCC)、 咳過敏症候群 (CHS) と判断する。 

UCC

  • 精査するも原因が不明。
  • 最新の診療ガイドラインに従って専門家の指導のもとで行う治療トライアルによっても8週以上持続する咳。

💊ガイドラインで推奨される治療

スピーチセラピー
ガバペンチン
ガバペンチンは慢性咳嗽に対する保険適用がないことに留意

CHS

  • 低レベルの温度・機械的・化学的刺激を契機に生じる難治性の咳を呈する臨床的症候群。
  • 主な症状は喉頭違和感、 胸やけ、 会話、 歌唱中、 食事、 空気の乾燥、 香水の香りなどを契機にした咳。

💊ガイドラインで推奨される治療

スピーチセラピー
プレガバリン
プレガバリンは慢性咳嗽に対する保険適用がないことに留意

難治性咳嗽に関するトピック

最近、 難治性咳嗽に対する新規薬剤P2X3受容体拮抗薬ゲーファピキサント (リフヌア®) が日本でも承認された。

まとめ (Take Home Message)

  • 咳嗽は持続期間で急性咳嗽、 遷延性咳嗽、 慢性咳嗽に分類する。
  • 遷延性咳嗽・慢性咳嗽は、 胸部X線で陰影を認めるものと認めないものに分ける。
  • 胸部X線で陰影を認めない場合は、 慢性咳嗽の5大疾患 (咳喘息、 アトピー咳嗽、 COPD、 GERD、 後鼻漏) をまず考えて治療的診断をする。

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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