寄稿ライター
2ヶ月前
高収入である医師は、 さまざまな投資に勧誘されることも多いです。 連載 「医師による医師のための財テク術」 の14回目では、 前回に引き続き、 医師が勧誘される代表格 「ワンルーム (1R) マンション投資」 の闇について考察します。
前回の記事はコチラ。
上の表は典型的な新築1Rマンションのキャッシュフローです。 頭金なしでの取引は法律違反となるので、 10万円の頭金が入れてあります。
見てお分かりの通り、 都内の新築ワンルームマンションでは、 毎月のキャッシュフローはほぼ必ずマイナスとなります。 ただ、 営業担当者は 「将来の積立になる」 「年金対策になる」 などと言葉巧みに騙して売りつけてくるのです。
なお、 45年ローンを組める金融機関もあり、 そのデータを出してくる悪徳業者もいます。 毎月の返済額が下がり、 見た目のキャッシュフローは良くなります。 しかし、 トータルの金利支払いは通常ローンと比べ、 約440万円も損します。
細かい点は省略しますが、 他にもデメリットは多いです。 健全な投資とはいえず、 45年ローンは絶対にやめましょう。
1Rマンションにずっと住みたいという人は少ないので、 入れ替わりが激しくなります。 借主が一度退去すると、 新築プレミアムがなくなり、 家賃相場は急落します。
築浅の物件は他の新築物件が競合となるため、 最初の10年間は家賃下落率が高く、 その後は緩やかに下落するとされております。 詳しくは、 やや古いですが、 三井住友トラスト基礎研究所が算出したデータ*¹がありますので、 ご確認ください。 概ね、 年1%前後家賃が下落すると想定した方がいいでしょう。
1Rマンションは既に過剰供給とされており、 東京23区内でも10%程度の空室率を覚悟したほうがいいです。 ある賃貸住宅市場レポートなどを読むと、 東京都市部では14%程度、 神奈川・埼玉・千葉では12~13%程度の空室率となっているそうです。
昨今はインフレによって賃貸価格も上昇しておりますが、 それは1LDK以上の物件の話。 例えば23区内の1LDKの空室率は6%と低め。 ロケーションなどの条件が良ければ積極的な値上げが可能ですが、 1Rマンションの賃上げはかなり難しいと考えた方がいいでしょう。
以上の要素を加味すると、 さらにキャッシュフローは悪くなります。 新築プレミアムがなくなって家賃が9万円にさがり、 空室率10%、 修繕積立金が月5000円まで上げられたとすると、 収支は大幅なマイナスになります。
さらに新築マンションの建物部分の固定資産税は5年間半額に減額されるので、 6年目以降は増えます。 金利が上昇するリスクも考慮する必要があります。 【上図】は最悪のケースのキャッシュフローです。
こんな収支表を見せたら誰も買ってくれなくなるため、 営業担当者はこういったリスクを隠してきます。 皆さんは、 くれぐれも見栄えのいい損益表に騙されないようにしましょう。
*¹三井住友トラスト基礎研究所 : 経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由 (2013/1/16)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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