IBDマニュアル
1年前
本コンテンツでは原因不明で治療が困難な炎症性腸疾患 (IBD) について、 疫学・病態・治療などの観点から解説を行います。 最新のエビデンスを基にしておりますので、 是非臨床の参考としていただければ幸いです。
北里大学医学部 消化器内科学
5-アミノサリチル酸 (ASA) 製剤の有効成分はメサラジンである。 サラゾスルファピリジンは腸内細菌によりスルファピリジンと5-ASAに分解され、 大腸内で作用する。 スルファピリジンが原因とされる副作用が認められ、 5-ASAだけを成分としたメサラジン製剤が開発された。
5-ASA製剤は有効成分のメサラジンが腸管局所で粘膜に直接接することで治療効果を発揮する。
時間依存型の薬剤。 エチルセルロースでコーティングされたメサラジンが小腸から徐々に溶けだし、 小腸から大腸まで5-ASAが放出される。
pH依存型の薬剤。 pH7以上のアルカリ性になる回腸末端でコーティングが溶けメサラジンが放出される。
表面のコーティングはpH7以上のアルカリ性になる回腸末端で溶解する。 さらに親油性基剤と親水性基剤からなるマルチマトリックス(MMX)構造の中にメサラジンが含有され、 メサラジンの放出が徐放化されている。
潰瘍性大腸炎、 クローン病の寛解導入、 寛解維持療法の両方に使用される。 5-ASA製剤には経口薬と局所製剤として注腸製剤と坐剤があるが、 本項では経口薬について解説する。 本邦で使用可能な経口剤はメサラジン3剤とサラゾスルファピリジン1剤の計4剤となる。
令和4年度潰瘍性大腸炎治療指針 (内科)
潰瘍性大腸炎の寛解導入、 寛解維持における5-ASA製剤の位置づけは以下の図の通りである。
潰瘍性大腸炎治療フローチャート
<適応>
メサラジン (ペンタサ®、 アサコール®、 リアルダ®)、 サラゾスルファピリジン (サラゾピリン®)
令和4年度クローン病治療指針 (内科)
クローン病活動期および寛解維持における5-ASA製剤の位置づけについては以下の図の通りである。
クローン病診断フローチャート
<適応>
メサラジン (ペンタサ®)、 サラゾスルファピリジン (サラゾピリン®)
活動期:軽症~中等症
寛解維持療法
5-ASA製剤はUC治療の基本薬である。 5-ASA製剤は高用量の効果が高いため、 寛解導入療法には各製剤の最大量を投与する。 寛解維持療法では各製剤2g/日以上が推奨される。 患者さんは活動期~寛解期にかけて長期に5-ASA製剤を内服することになる。
一方 、 5-ASA製剤の不耐や副作用で使用できない場合は、 他の治療を検討しなければならず、 その選択は悩ましい。
pH 依存型製剤のアサコール®やpH依存型MMX製剤のリアルダ®はpH7以上でコーティングが溶解するようになっているが、 溶解せず剤型がそのまま排泄されることがある。 特に活動期の排便回数が多い場合は注意が必要である。 せっかく内服しても治療効果が発揮されないため、 時間依存型製剤への変更も検討する。 患者さん自身に薬剤がそのまま排泄されていないか確認するよう指導しておく。
内服アドヒアランスが低下することが多く、 アドヒアランスの低下は再燃の一因となる。 アドヒアランスの低下をきたさないよう患者さんが内服しやすい製剤形態(錠剤または顆粒)の選択や、 服薬回数を1日3回から1回または2回にするなど工夫が必要である。 特に寛解維持期はアドヒアランスの低下を防ぐために1日1回投与が望ましい。 なお、 症状が落ち着いていても内服を自己中断や自己判断で減量しないよう、 患者さんへの繰り返しの説明(患者教育)が重要である。
症状が再燃して来院した際には、 内服アドヒアランスが保たれていたのかを確認する必要がある。
CDに対する効果はUCに対する効果より概して低い。 栄養療法に受容性がある場合は併用も行われる。
5-ASA不耐の報告が増加しており別項に記載する。
頻度は高くないが下記の有害事象が報告されており、 被疑薬の可能性があれば投薬を中止する。 投与中は血液検査(血算、 肝機能、 腎機能、 血清アミラーゼ)を行いモニタリングを行う。 症状や検査結果により尿検査や胸部X線、 腹部超音波検査、 心電図など適宜追加する。
ペンタサ錠250mg / 500mg / 顆粒94%
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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