Jiangらは、 下部直腸癌患者を対象に、 腹腔鏡下手術と開腹手術の短期転帰を検討する多施設共同非劣性無作為化臨床試験を実施。 その結果、 経験豊富な外科医が行う腹腔鏡手術は、 開腹手術と同等の病理学的結果をもたらし、 高い括約筋温存率、 良好な術後回復を示すことが示された。 本研究は、 JAMA Oncol誌において発表された。
📘原著論文
Short-term Outcomes of Laparoscopy-Assisted vs Open Surgery for Patients With Low Rectal Cancer: The LASRE Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol. 2022 Sep 15;e224079.PMID: 36107416
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
一般化できるかどうかが大切なポイントだと思います。 昨今、 本研究を含めて中国でのRCT結果が5大雑誌に掲載されていますが、 対象患者のBMI中央値が22程度ですし、 経験豊富な外科医以外の場合にはどうなのか、 更なる研究が求められます。
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背景
下部直腸癌患者に対する腹腔鏡下手術と開腹手術の有効性は確立されていない。
研究デザイン
- 対象:下部直腸癌の治癒目的の切除を予定している患者
- 以下の2群に2:1の割合で無作為に割り付け。
- 腹腔鏡下手術群:712名
- 開腹手術群:358名
- 主要評価項目:病理学的転帰、 手術成績、 術後回復、 術後30日の合併症と死亡率などを検討。
研究結果
- 直腸間膜の完全切除率
- 腹腔鏡下手術群:85.3% (685名中521名) 、
- 開腹手術群:85.8% (354名中266名)
差:-0.5%、 95%CI -5.1-4.5、 P=0.78
- circumferential resection margins陰性率
- 腹腔鏡下手術群:98.2% (685名中673名)
- 開腹手術群:99.7% (354 名中353名)
差:-1.5%、 95%CI -2.8-0.0、 P=0.09
- distal resection margins陰性率
- 腹腔鏡下手術群:99.4% (685 名中 681 名)
- 開腹手術群:100% (354名中 354 名)
差:-0.6%、 95%CI -1.5-0.5、 P=0.36
- 採取リンパ節数の中央値
- 腹腔鏡下手術群:13.0
- 開腹手術群:12.0
差:1.0、 95%CI 0.1-1.9、 P=0.39
- 腹腔鏡群の方が括約筋温存率が高く、 入院期間が短かった。
- 括約筋温存率
- 腹腔鏡下手術群:71.7% (685名中491名)
- 開腹手術群:65.0% (354名中230名)
差:6.7%、 95%CI 0.8-12.8、 P=0.03
- 入院期間
- 腹腔鏡下手術群:8.0日
- 開腹手術群:9.0日
差:-1.0、 95%CI -1.7--0.3、 P=0.008
- 術後合併症の発生率には2群間で有意差はなかった。
- 腹腔鏡下手術群:13.0% (685名中89名)
- 開腹手術群:17.2% (354名中61名)
差:-4.2%、 95%CI -9.1%--0.3%、 P=0.07
結論
下部直腸癌患者を対象としたRCTにおいて、 経験豊富な外科医が行う腹腔鏡手術は、 開腹手術と同等の病理学的結果をもたらし、 高い括約筋温存率、 良好な術後回復を示すことが示された。