JAK阻害薬 (JAKi) 治療に精通する臨床医から成るタスクフォースは､ JAKiの新たな適応や安全性に関する最新の知見を踏まえ､ 2024年版 ｢JAKiによる免疫介在性炎症性疾患の治療に関する専門家のコンセンサス声明｣ を発表した｡ この声明は､ システマティックレビュー2件に基づき､ 包括的原則､ 適応症､ 投与量と投薬戦略､ 警告と禁忌､ スクリーニングプロトコル､ モニタリング勧告､ 安全性プロファイルが審議され､ 今後の研究課題も提示された｡ JAKi処方のタイミングには触れず､ 処方が決定した後の適正使用に関する事項に焦点が置かれている｡ 

📘原著論文

Expert consensus statement on the treatment of immune-mediated inflammatory diseases with Janus kinase inhibitors: 2024 update. Ann Rheum Dis. 2025 Mar 3:S0003-4967(25)00181-5. Online ahead of print.

👨‍⚕️HOKUTO監修医コメント

Principlesのところには下記のような大切なガイドラインの原則が記載されています｡

"No guideline can address all circumstances that may be pertinent in a particular patient with a particular diagnosis, unique comorbidities, a personal disease history as well as treatment history."

JAKiに関する今後の研究課題

1. JAKiの切り替え戦略

他のJAK阻害薬が無効または忍容性が低い患者に対する切り替えの有効性と安全性

2. 予測因子の解明

他のDMARDと比較したJAKiの効果予測因子

3. 心血管リスクの影響

炎症制御を通じた心血管リスク低下効果の有無 (ORAL Surveillance結果との関係)

4. VTE (静脈血栓塞栓症) の危険因子

クラス効果かJAK2阻害による影響か､ 発症メカニズムと実際のリスク

5. 癌既往歴のある患者での安全性

既存の癌･治療中に発生した癌のある患者での使用の安全性

6. 免疫チェックポイント阻害薬関連自己免疫疾患への適応

免疫関連有害事象 (irAE) に対する有効性と安全性

7. ウイルス感染症との関係

HBV､ HCV､ HPV､ COVID-19などの感染症がある患者での安全性｡ 感染時の適切なJAKi休薬期間

8. 妊娠･授乳中の安全性

妊娠中にJAKiを服用していた場合の対応と安全性

9. 選択的手術前後の対応

手術の際のJAKiの中断期間と再開のタイミング

10. RAの関節外症状に対する効果

血管炎､ 結節､ 肺病変､ 重複症候群などに対するJAKiの有効性

11. 他の標的治療との併用療法

重症RAなどでのJAKi＋bDMARD併用の有効性･安全性

12. 疾患ごとの分子作用機序の違い

個別疾患でのJAK阻害による分子レベルの影響

13. JAK阻害薬間の安全性の差

特にTYK2阻害薬など､ JAKi間の有害事象リスクの違い

14. MTX＋JAKi vs MTX＋ステロイドの比較

RA初期治療における寛解導入と短期的有効性・安全性の比較

15. JAK阻害薬によるニキビ発生の機序

JAK阻害薬関連ざ瘡の発症メカニズム

16. 寛解時の減量･中止可能性

すべてのJAKiで減量･中止が可能か

17. 薬物血中濃度と服薬アドヒアランス

JAKi濃度が服薬順守と相関するか

18. CrやCPK上昇のメカニズム

JAKiによるクレアチニン･クレアチンホスホキナーゼ上昇の背景

19. RA予防的投与としてのJAK阻害薬の有効性

前RAやRA発症予防への適応可能性

20. 疼痛･疲労に対する影響とメカニズム

JAKiが疼痛･披露の症状に及ぼす影響と作用機序

21. ワクチン接種時の中断期間

JAKiを中断すべき期間とタイミング

22. JAKi間の臨床的有効性の差

(デュークラバシチニブなど) 異なるJAKi間での有効性の差について

関連コンテンツ

診療ガイドライン2024からみるアトピー性皮膚炎マネジメント : 生物学的製剤･経口JAK阻害薬の使い方

近畿大学皮膚科学教室 主任教授 大塚篤司先生

【IBDマニュアル】JAK阻害薬の使い分け

東京医科歯科大学 潰瘍性大腸炎･クローン病先端医療センター/消化器連携医療学 藤井俊光先生