HOKUTO編集部
5ヶ月前
国立がん研究センターがん対策研究所検診研究部 (部長・中山 富雄氏) の研究グループは、 2005年版に公開された「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」について、 その後に報告された研究を検証し、 このたび同ガイドラインの2024年度版を公開した (2024年11月末公開)。 同ガイドラインが更新されたのは19年ぶりとなる。
便潜血検査免疫法と全大腸内視鏡検査の利益と不利益を比較し、 有効性の検討を行った。 なお、 2005年版から推奨グレードに変更はなかった。
⭕️ 利益|大腸がん死亡率減少効果
❌️ 不利益|偽陽性、過剰診断、偶発症など
以下に記載のとおり、 NNS (Number Needed to Scope;偽陽性の指標、 免疫法による陽性者数を全大腸内視鏡による大腸がんの発見数で割った値) の他にも免疫法の不利益はあるが、 それらを総合しても利益が不利益を上回ると判断されるため、 対策型検診・任意型検診としての実施を勧める。
⭕️利益|免疫法はRCTで死亡率減少効果が証明されている便潜血検査化学法と同等以上の死亡率減少効果が期待できる。 また、1万例を対象に大腸がん検診を行ったと仮定した場合の大腸がん検出数は、 免疫法は24例、 化学法は14例であった(図1)
❌️不利益|免疫法でのNNS (Number Needed to Scope;偽陽性の指標、 免疫法による陽性者数を全大腸内視鏡による大腸がんの発見数で割った値) は13、 化学法は11で大差はなかった (図1)
以下に記載のとおり、 総合すると全大腸内視鏡は死亡率減少効果を示すものの、 証拠の信頼性は低く対策型検診では推奨されない。 任意型検診においては利益と不利益に関する適切な情報を医療者と検診対象者が共有し、 医療者は検診対象者の判断を支援する必要がある。
⭕️利益|全大腸内視鏡の観察研究では大腸がん死亡率減少効果が示されているが、 検査目的(診療or検診)が明確に区別されていないため、 証拠の信頼性は低い。 また、 追加で実施した代替指標評価でも、 参照基準(S状結腸鏡検査)の検出率を上回ることができなかった。 1万例を対象に大腸がん検診を行ったと仮定した場合の大腸がん検出数は、 免疫法が14例、 S状結腸鏡が16例、 全大腸内視鏡が11例であった (図2)
❌️不利益|各検査法のNNSは、 免疫法20、 S状結腸鏡17、 全大腸内視鏡200であった (図2)
複数の研究結果をとりまとめ、 免疫法の感度と特異度を計算した。 大腸がんを検出する感度は84%、 特異度は92%であった。
2005年版当時の免疫法の感度に比べて、 現在国内外で使用されている免疫法の感度が大幅に向上したことが明らかになった
2005年版では明示していなかった検診対象年齢、 検診間隔、 採便回数を明示した。
検診対象は40歳から74歳を推奨するが、 45歳または50歳開始も許容される (検診間隔を1年から2年にすることも可能、採便回数も1回法、 2回法のどちらでも可能)
大腸がんの対策型検診として免疫法を引き続き推奨する。 ただし、 免疫法のカットオフ値(検査陽性と判定する便中ヒトヘモグロビン値)の設定など運用に関する課題や郵送法は今後の検討課題である。
全大腸内視鏡に対する今回の評価はあくまで健常者を対象としたスクリーニング検査としての評価であり、 便潜血検査陽性者への精密検査や内視鏡治療における重要性に関しては、 決して揺るがないものである。 全大腸内視鏡による検診の死亡率減少効果を調べるCRTが国内外で進行中である。 それらの結果が公表された後に再評価を行う。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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