海外ジャーナルクラブ
3ヶ月前
Tibauらは、 National Comprehensive Cancer Network (NCCN) が推奨するゲノム標的癌治療薬とその分子標的の臨床的有用性および有効性を横断研究で検討した。 その結果、 固形癌に対するゲノム標的癌治療のうち、 患者に対して高い有用性があるのは約1/8であり、 約1/3は有望ではあるが有益性はいまだ証明されていないことが明らかとなった。 本研究は、 BMJ誌にて発表された。
ガイドラインの2%はESCATでレベルXに分類され、 "lack of evidence"*とのことです。
NCCNガイドライン最新解説
ゲノム標的治療は、 癌治療において重要な役割を果たしており、 特にNCCNガイドラインで推奨される治療法が臨床で広く使用されている。 しかし、 これらの治療の臨床的有用性については、 まだ十分に理解されていない部分がある。
そこで本研究では、 NCCNが推奨するゲノム標的治療薬の臨床的有用性を評価することを目的とした。
50のドライバー変異を標的とする74のゲノム標的癌治療薬に関する、 411の推奨が調査された。
分子標的薬の有効性はESCAT、 ゲノム標的癌治療薬の臨床的有用性はESMO-MCBSを用いて評価した。
実質的な臨床的有用性 (ESMO-MCBS Grade 4~5) を示し、 ESCATカテゴリーレベルIに該当する分子標的を有する薬剤を 「有益性の高い治療」、 ESMO-MCBSがGrade 3でESCATカテゴリーレベルIに該当する分子標的を有する薬剤を 「有望ではあるが、 有用性は証明されていない治療」 と分類した。
推奨の根拠
対象となった推奨のうち、 84% (346/411試験) はさまざまな相の臨床試験に基づいていたが、 16% (65/411試験) は症例報告や前臨床試験のみに依存していた。
主要評価項目
臨床試験の78% (271/346試験) は全奏効率を主要評価項目としており、 3% (12/346試験)が生存率を主要評価項目としていった。
ESCAT
ESCATのレベルIに該当するのは60% (246/411試験)、 レベルⅡまたはⅢは35% (142/411試験中)、 レベルⅣ~Xは6% (23/411試験) であった。
ESMO-MCBS
ESMO-MCBSでGrade 4~5の実質的な臨床的有用性を示したのは12% (32/267試験)、 グレード3は45% (121/267試験) であった。
ESCATおよびESMO-MCBSを組み合わせた評価の結果、 約1/8 (12%、 32/267試験) の試験が高い有益性を示し、 約1/3 (33%、 88/267試験) が有望ではあるが有用性は証明されていないと評価された。
NCCNガイドラインが好ましいとして支持する118個の介入のうち、 53% (62個) が 「高い有用性を有する治療」、 または 「有望であるが証明されていない有用性を有する治療」 の2つに分類された。
著者らは、 「NCCNが推奨するゲノム標的治療のうち、 約1/8が患者に高い有用性を提供する可能性がある一方で、 約1/3の治療法は有望ではあるが有用性はまだ証明されていないことが明らかになった。 この結果は、 NCCNの推奨が期待される臨床的利益と一致しているかどうかを確認することは、 エビデンスに基づいた治療決定において極めて重要であることを示唆している」 と述べている。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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