Brodie膿瘍の臨床的特徴と治療戦略は?
著者

メイヨークリニック感染症科 松尾貴公

10日前

Brodie膿瘍の臨床的特徴と治療戦略は?

Brodie's Abscess: A Systematic Review of Reported Cases

J Bone Jt Infect. 2019 Jan 24;4(1):33-39.
Brodie膿瘍の臨床的特徴と治療戦略は?

研究方法

研究デザイン

系統的レビュー (PRISMAガイドライン*に準拠)

*Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses guidelines¹⁾

対象

1921年~2018年に報告された、 Brodie膿瘍の症例報告・シリーズ (計70報、 407例)

除外基準

開放性外傷や手術後、 結核等が原因の骨感染症

評価項目

症状持続期間、 画像検査、 血液検査所見、 治療法 (外科的治療・抗菌薬)、 微生物学的結果、 転帰

主な研究結果

患者背景と症状

患者の中央値年齢は17歳で、 男性が全体の67%を占めた (男女比 2.1:1)。

主訴は疼痛 (98%) と腫脹 (53%)であり、 84%の患者で発熱はなかった。

血液検査異常は半数未満であり、 ESR正常*¹が51/92例、 WBC正常*²が61/87例、 CRP正常*³が31/40例であった。

*¹ <20 mm/h、 *² <10×10⁹/L、 *³ <10 mg/dL

診断法と起因菌

診断は、 X線 (96%)、 MRI (16%)、 CT (8%) などで行われた。

起因菌はStaphylococcus aureusが最多 (67.3%) であり、 うち6例がMRSA*であった。 一方、 25.8%の症例は培養陰性であった。

*メチシリン耐性黄色ブドウ球菌

治療法と転帰

治療法は94%が手術 (掻爬や洗浄) で、 うち77%が抗菌薬併用であった。 抗菌薬単独での治療は5%にとどまった。

転帰が報告された128例中、 20例 (15.6%) が再発し再手術または再治療が必要であった。 永続的な障害は2例に認められた。

Brodie膿瘍の臨床的特徴と治療戦略は?

Brodie膿瘍は、 血行性感染による亜急性骨髄炎の特殊型であり、 骨髄内に限局性の膿瘍を形成する疾患です。 1832年にSir Benjamin Brodieによって初めて報告されました²⁾。

本報告のように、 緩徐発症で全身症状が乏しく、 発熱や炎症マーカーが正常であっても除外はできない点に注意が必要です。

また、 亜急性~慢性の経過を辿るにも関わらず、 起因菌としてはStaphylococcus aureusが大半であることが特徴です。

外科的除去と抗菌薬治療により基本的に予後は悪くはありません。 とはいえ、 再発率が15%と一定数存在すること、 また抗菌薬治療が長期に及ぶこともあるため、 整形外科と感染症科 (内科) の密な連携の上、 慎重なフォローアップが求められます。

<出典>
1) BMJ. 2009 Jul 21:339:b2535.
2) Med Chir Trans. 1832:17:239-49.

著者 : 松尾貴公
2011年 長崎大学医学部卒業、 聖路加国際病院初期研修・内科専門研修・内科チーフレジデント・感染症科フェロー・医員を経て2021年 テキサス大学ヒューストン校/MDアンダーソンがんセンターにて臨床留学。 2022年 同チーフフェロー、 2023年 同アドバンストフェロー、 2024年よりメイヨークリニック感染症科の整形外科感染症フェローとして骨関節感染症に特化したトレーニングを行い更なる研鑽を積んでいる。 また、 日本チーフレジデント協会 (JACRA) 世話人を経て、 現在日本感染症教育研究会 (IDATEN) KANSEN JOURNAL編集委員・米国感染症学会 (IDSA) 感染症教育推進委員。 2024年2月よりFebrile Podcast ID Digital Institute (IDDI)のメンバーも務めており、 デジタルデバイスを活用した新しい感染症教育に積極的に取り組んでいる。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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