中堅勤務医にも医師偏在対策の波が?
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26日前

中堅勤務医にも医師偏在対策の波が?

中堅勤務医にも医師偏在対策の波が?
医局ウォッチャーこと、 コアライ ミナトです。 連載20回目のテーマは、  「医師偏在対策」 です。 

2024年12月、 厚労省の 「新たな地域医療構想等に関する検討会」 で気になる提言がされました。

背景

ご存じの通り、 地域間での医師偏在が問題となっています。 僻地などの病院に医師が集まらない、 という話ですね。

昔は医局人事で維持していたわけですが、 医局の力が弱まり、 今後は国も力を貸して対応していくようです。

既に始まっている制度として、 シーリングが挙げられます。 専攻医に定員を設けることで、 若手医師の勤務地を縛るものですね。 開業医についても、 都市部での新規開業に制限をかけるなどの締め付けが迫っているようです。

そして今回は、 中堅以降の勤務医にも影響がありそうな話です。

厚労省のとりまとめ

厚生労働省の 「新たな地域医療構想等に関する検討会」 による、 とりまとめの要点をピックアップします。

中堅勤務医にも医師偏在対策の波が?
厚労省の公表資料 *¹⁾より引用
  • 中堅・シニア世代にもアプローチしていく
  • まず重点的に対処すべきは、 (僻地というよりは) 今後も定住者が見込まれるにも関わらず、 医師の確保が難しい地域
  • 都道府県が、 実情に合わせ決定していく
  • 中核的な病院からの医師派遣を求めていく
  • 派遣に当たっては、 医師や医療機関への経済的インセンティブを考える
  • 現状の強制策は、 管理者となる医師の対象地域での勤務義務化
  • 適用は、 令和2年以降に研修医となった医師から
  • 都道府県と大学病院がパートナーシップを結び進めていく

深掘り

上の項目について、 個人的な感想を述べていきます。

中堅勤務医にも医師偏在対策の波が?

1. インセンティブ : 割に合わない

まず医師や医療機関に対する、 経済的インセンティブについてです。 これは割に合う金額には及ばないと予想します。 根拠は以下のような文章です。

  • 国において事業費の総額を設定し、 その範囲内で行う
  • 派遣元医療機関にも、 支援を行う
  • 財源は全被保険者に負担を求めることも考慮するが、 それには反対意見も

ポイ活サイトのポイント山分けキャンペーンですかと言いたくなります。 しかも渋ってますね。

個人が被る損失(交通費、 単身赴任費用、 退職に伴う賞与や退職金の減額など)を補填できるかも怪しいのではないでしょうか。 ただし、 現状無償で人事に応じている医局員には朗報かもしれません。

2. 強制力 : 今は影響は小さいが…

中堅勤務医にも医師偏在対策の波が?
写真はイメージです

では制度の強制力はどうでしょうか。

現状、 施行されている策は 「地域医療支援病院の管理者(院長)は、 医師少数区域での勤務経験を要件とする」 というものです。 一定期間、 対象地域で勤務しないと院長になれないということですね。

今後はさらに対象病院を広げていくことや、 勤務期間を伸ばしていくことが提言されています。

総合病院の院長を目指している人以外は、 影響がなさそうですね。 あくまでも 「当面は」 ですが。

3. 医師派遣 : 医局だからできていた

中堅勤務医にも医師偏在対策の波が?
写真はイメージです

そもそも人不足の病院に人を送るというのは、 医局という村社会的な雰囲気の中でこそ成立した話だと思うのです。 「育ててやったのだから」 「拒否すれば…」 など。

これを国家ぐるみで本気でやろうとすると、 「異動を断ったら、 資格剥奪」 「協力しない中核病院は、 認定取り消し・診療報酬減額」 みたいなことを明文化することになります。 これは様々な意味でハードルが高いはずです。

だからこそ、 都道府県-大学病院のパートナーシップという話になるのでしょう。

まとめ

今回の要点は、 以下の通り。 あくまでも提言段階ですが、

  • 中堅以降の勤務医にも、 偏在対策の波が
  • まずは医局人事への、 インセンティブから始まりそう
  • 当面は、 激しい強制はなさそう
  • 今後どこまで踏み込んでくるか (法的、 人道的に) 

なかなか世知辛い時代です。 さて、 今回は以上です。

中堅勤務医にも医師偏在対策の波が?

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出典

¹⁾ 厚生労働省 : 「新たな地域医療構想等に関する検討会」 のとりまとめを公表します

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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