インタビュー
7ヶ月前
「若手医師はどんどん世界に飛び出してほしい」 ――。 かつて研修医制度の創設に携わり、 日本学術会議の会長として幅広い分野の人材育成にも取り組んできた東京大学名誉教授・黒川清氏はこう強調します。
――初期研修先を自由に選べるようになり、 医師のキャリアが多様化している現状をどう見ていますか。
「医師がキャリアを自由に選択できるようになった、 という点では良い流れです。 一昔前は大学が人材を囲い込む"縦割り"の時代でした。 縦割りは医局に残るか、 関連病院の勤務か、 ゆくゆく開業か、 くらいの狭い思考に陥ってしまいます」
「私は厚労省の検討部会メンバーの1人として研修制度の創設に関わった際、 さまざまなバックグラウンドを持つ人材が、 研修医の段階から混ざることの必要性を訴えてきました。 現在、 インターネットの口コミなどで評価の高い病院に人材が集まるのは、 民主主義としても教育事業としても、 あるべき姿といえます。 研修を提供する先も切磋琢磨されるわけです」
「ただ楽をして稼ぎたい、 という理由で、 自由診療に流れることは好ましくありません。 若手医師には、 自分の可能性や視野を広げるためにもどんどん海外に飛び出してほしいです」
「私は約15年間、 アメリカの複数の機関でキャリアを積みました。 海外の医師と一緒に働くことで、 自分や日本の流儀を客観視することもできます。 プロフェッショナルとして自立できるわけです。 個人としてグローバル基準で活躍できる人材が増えれば増えるほど、 結果として日本の医療のクオリティーの底上げにつながります」
――他に若手医師がするべきこと、 また医学教育に望むことはありますか
「若手医師は手技を磨くのはもちろん、 新しい医学情報をどんどんアップデートしていくことも大切です。 ただ、 関連分野を全部読み込むことは不可能なので、 せめてインターネットや書籍などを通して、 自分が必要な時に必要な情報に触れるようにしてほしいです」
「医学教育に関して、 若手医師はぜひ学会に積極的に参加してほしいです。 若手にとって学会参加のメリットは、 同年代で横のつながりができるところです。 自分と同じような課題意識や展望を持っている他の組織の同志と出会える場になります。 学会の開催者には、 こういった若手の横のつながりを提供するプログラムを増やしてほしいですね」
――最後に、 HOKUTO会員へメッセージをお願いします。
「自分の頭で考えぬく、 そのために多様な情報や人材に触れ“他流試合”をする、 そして、 できれば世界に羽ばたいて、 競い合ってほしい。 キャリアを転々とすることは日本では珍しいかもしれませんが、 世界では当たり前です。 情報のアップデートも欠かさず、 次世代を切り開いていくことを期待しています」
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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