Beyond the Evidence
1年前
「Beyond the Evidence」 では、 消化器専門医として判断に迷うことの多い臨床課題を深掘りし、 さまざまなエビデンスや経験を基に、 より最適な解決策を探求することを目指す企画です。 気鋭の専門家による充実した解説、 是非参考としてください。
切除不能な進行・再発食道扁平上皮癌に対する1次治療として、ペムブロリズマブとCF療法、ニボルマブとCF療法、ニボルマブとイピリムマブ併用療法の使い分けは?
これら三つの治療法の使い分けに関して確立したエビデンスは存在しない。しかし、CheckMate 648試験の追加解析で、ニボルマブとイピリムマブ併用療法はPD-L1 TPS1%以上、肝転移を有さない、腫瘍量が限定的な症例で治療効果が期待される。
切除不能な進行・再発食道扁平上皮癌に対する初回薬物療法として、KEYNOTE-590試験¹⁾の結果からペムブロリズマブとCF療法が、CheckMate 648試験²⁾の結果から、ニボルマブとCF療法と、ニボルマブとイピリムマブ併用療法が標準治療として確立した。
そのため、現在の食道癌診療ガイドライン 2022年版³⁾においては、これら三つのレジメンがエビデンスレベルAで強く推奨されているが、使い分けに関するエビデンスは非常に乏しいのが実情である。
レジメンを構成する薬剤について考えると、ニボルマブとイピリムマブ療法は、シスプラチンと5-FUといった殺細胞性抗がん薬により構成されるレジメンと異なり、腎機能障害予防のための大量補液が不要で外来で実施可能である。
またCheckMate 648試験の長期フォローアップデータがASCO-GI 2023で発表され、ニボルマブとイピリムマブ療法を受けた約20%の症例で長期奏効が得られていた⁴⁾。そのため、実臨床においてはニボルマブとイピリムマブ併用療法の有効性が期待できる対象をいかに抽出するかが非常に重要である。
その際に参考になるデータがCheckMate 648試験の追加解析である。ASCO-GI 2023で発表された追加解析では、PD-L1 TPS 1%未満の症例においては、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群の全生存期間中央値(mOS)が11,9ヶ月、CF療法群のmOSが12.2ヶ月で、ハザード比が0.95と算出されており、PD-L1 TPS 1%以上でハザード比が0.64であった⁴⁾ことを鑑みると、PD-L1 TPS 1%未満ではニボルマブとイピリムマブ療法の治療効果が得にくい可能性が示唆される。
また昨年のESMO 2022で発表された追加解析では、高腫瘍量である症例や肝転移を有する症例等において、ニボルマブとイピリムマブ療法の治療効果が得られにくい可能性が示唆されている5)。
そのため、ニボルマブとイピリムマブ療法は、PD-L1 TPS 1%以上、腫瘍量が限定的、肝転移を有さない症例において効果が期待される。またCF療法をバックボーンとする二つのレジメンに関しては投与間隔等の違いはあるが、使い分けに資するエビデンスはさらに乏しい現状がある。
現在、切除不能な進行・再発食道扁平上皮癌の予後改善を目指して、レンバチニブの上乗せを検討する国際共同第III相試験であるLEAP-014試験や、ペムブロリズマブとCF療法にFGFR阻害薬であるフシバチニブを上乗せした治療を検討する第Ib相試験も進行中である。
しかし一方で、現状の三つのレジメンの使い分けに資するようなバイオマーカー研究も希求されており、研究者による今後のエビデンスの創出が期待される。
【臨床Q&A】遠隔転移を有する切除不能な食道扁平上皮がんに対する初回治療は?(国立がん研究センター中央病院 山本駿先生)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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