HOKUTO編集部
4ヶ月前

2025年12月6~9日に開催された米国血液学会 (ASH 2025) における 多発性骨髄腫 (MM) の注目演題について、 大阪国際がんセンター血液内科副部長の藤重夫先生にご解説いただきました。
試験の概要 再発・難治性多発性骨髄腫 (RRMM) 患者を対象に、 抗BCMA×CD3二重特異性抗体テクリスタマブ+抗CD38抗体ダラツムマブ併用療法 (Tec-Dara) を、 担当医師が選択した標準治療 (ダラツムマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン [DPd] または ダラツムマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン [DVd]) と比較した第Ⅲ相試験MajesTEC-3の結果である。
試験の結果、 Tec-Dara群は標準治療群と比較して、 無増悪生存期間 (PFS) においてハザード比 (HR) 0.17 (36ヵ月PFS率 83.4% vs 29.7%)、 全生存期間 (OS) においてHR 0.46 (36ヵ月OS率 83.3% vs 65.0%) と、 極めて優れた成績を示した。
同詳細はN Engl J Med2025年12月9日オンライン版に同時掲載された。
👨⚕️考察 テクリスタマブとダラツムマブの併用は、 RRMM治療において極めて顕著なPFSおよびOSの改善を実現した。 この結果により、 今後は本レジメンが再発・難治性MM治療の新たな標準として位置付けられる可能性が高い。 一方、 免疫抑制に伴う感染症への対策が重要になると予想される。
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試験の概要 KLN-1010は、 アフェレシス (成分採血) やリンパ球除去化学療法を必要としない、 生体内 (in vivo) で抗BCMA CAR-T細胞を生成する新規遺伝子治療である。 第I相試験に登録された3例の予備結果において、 全例が投与1ヵ月時点で微小残存病変 (MRD) 陰性 (感度10⁻⁵または10⁻⁶) かつ部分奏効 (PR) を達成し、 3ヵ月時点では最良部分奏効 (VGPR) へと深化、 そして病勢進行なく奏効を維持した。
毒性は管理可能であり、 Grade 2のサイトカイン放出症候群 (CRS) が2例で認められたものの、 1ヵ月時点でGrade 3以上の血液学的毒性や治療関連感染症は認められなかった。 また前処置化学療法なしでCAR-T細胞の増殖が確認され (15日頃にピーク)、 メモリー表現型のT細胞が3ヵ月まで持続した。
👨⚕️考察 「Off-the-shelf (既製品) 」 かつ 「in vivo生成」 という革新的なアプローチにより、 CAR-T細胞療法のアクセス向上および毒性軽減を実現する可能性がある。 アフェレシスやリンパ球除去が不要で、 血球減少も限定的である点は画期的である。 さらに、 Proof-of-concept (概念実証) として、 血液中でのCAR-T細胞の増殖が観察され、 早期のMRD陰性達成と奏効の深化も示されたことは、 MM治療のみならずCAR-T細胞療法全体のパラダイムシフトをもたらす可能性がある。 安全性についての継続的なフォローは必要なものの、 このような手法が確立されれば、 CAR-T細胞療法自体の劇的なコスト削減にも貢献することが期待される。
試験の概要 標準治療 (プロテアソーム阻害薬 [PI]、 免疫調節薬 [IMiD]、 抗CD38抗体) に抵抗性を示すRRMM患者を対象に、 GPRC5DとBCMA、 およびCD3を標的とする新規三重特異性抗体IBI3003の安全性および有効性を検討したファースト・イン・ヒューマンの第I相試験の初期報告である。 同薬はGPRC5DとBCMAの二重抗原エスケープを抑制する設計であり、 前臨床では既存の二重特異性抗体より強い抗腫瘍活性を示していた。
28例が登録され、 年齢中央値62歳、 R-ISS III期が18%、 高リスク染色体異常が64%、 前治療歴中央値4ライン、 髄外病変46%、 抗BCMA/GPRC5D治療歴41%と、 極めて治療抵抗性の集団であった。 治療関連有害事象は全例に認められたが、 CRSは64% (全てGrade 1-2)、 神経毒性 (ICANS) は6.1% (Grade 3以上なし) であり、 安全性は許容範囲と考えられた。 血球減少は高頻度であった。
有効性シグナルは早期から明確で、 用量依存的な改善がみられ、 120μg/kg以上のコホートでは全奏効率 (ORR) 83%を達成した。 髄外病変やBCMA/GPRC5D標的治療歴のある症例でも反応が得られた。
👨⚕️考察 IBI3003は治療抵抗性のRRMM集団においても有望な抗腫瘍活性を示し、 特に第I相試験の高用量域で高いORRが得られた点は注目に値する。 CRSの多くが低Gradeで管理可能であり、 神経毒性も低頻度であったことから、 三重特異性抗体としての安全性プロファイルは良好と考えられる。 BCMA単標的治療後の症例や髄外病変を有する症例でも反応が得られたことは興味深い。
試験の概要 自家造血幹細胞移植後にMRD陽性の新規診断MM患者200例を対象に、 ダラツムマブ+レナリドミド (D-R) 群とレナリドミド単独 (R) 群を比較したAURIGA試験の結果。
追跡期間中央値40.3ヵ月時点で、 10⁻⁵感度でのMRD陰性転換率はD-R群60.6% vs R群29.7% (OR 3.74、 p<0.0001)、 10⁻⁶感度では36.4% vs 13.9% (OR 3.59、 p=0.0003) と、 D-R群が有意に優れていた。 12ヵ月以上持続するMRD陰性率もD-R群が優位であった。 持続的なMRD陰性は、 MRD再陽性化のより良い予測因子であることが示された。
👨⚕️考察 MMに対する自家移植後の維持療法において、 ダラツムマブ追加により深い寛解 (特に10⁻⁶レベル) およびMRD陰性化の持続性が得られ、 PFS改善傾向も認められた。 近年、 MRD陰性の深化と持続がその後の長期予後改善につながるとする報告が多くなされており、 今後、 移植後維持療法の新たな標準治療となる可能性がある。

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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