日本食道学会
4ヶ月前
💬 京都大学大学院 医学研究科 腫瘍内科学講座 教授 武藤学先生
食道癌や頭頸部癌は多発することがフィールド癌化現象として知られており、 飲酒・喫煙が強く関係します。 しかし、 これまでどのような症例がどのくらいの頻度で多発癌を発生するかは明らかにされていませんでした。
今回、 われわれは、 食道癌内視鏡治療例の長期的な経過サーベイランスにより、 食道癌の前癌病変である多発異型上皮の程度別に異時性の多発癌の発生割合が異なることを明らかにしました。 この成果は、 食道癌に対する内視鏡治療後のサーベーランスの方法を考える上で重要な成果と考えています。
食道や頭頸部の前癌病変 (異型上皮) は、 ヨード色素内視鏡検査を行うと不染域として視認できます。 不染域は多発性の場合があり、 京都大学の武藤学 医学研究科教授、 堅田親利 同特定准教授らの研究グループは、 これをmultiple Lugol-voiding lesions (multiple LVL) と命名し、 食道や頭頸部に扁平上皮癌が多発する 「領域癌化」 にmultiple LVLがに強く関与することも報告しました¹⁾。
実際に、 同研究グループが行った日本食道コホート (Japan Esophageal Cohort : JEC) 試験では、 ヨード不染帯が多いと食道癌や頭頸部癌の発生率が高くなることが示されています²⁾。
食道粘膜のヨード不染帯の程度を3段階*に分類すると、 観察期間中央値80.7ヵ月 (範囲 1.3-142.3ヵ月) で、 以下の結果が得られました。
▼5年累積異時性食道癌発生率
▼5年累積異時性頭頸部癌発生率
日本食道学会では、 患者さんやご家族、 一般の方向けに癌予防の啓発活動を行っています。 本学会HP 「食道がんを正しく知ろう!」 では、 食道癌の診断・治療についてわかりやすく解説しています。 学会公式YouTubeチャンネルや市民公開講座でも啓発活動を行っています。
上述のJEC試験では、 領域癌化につながるmultiple LVLの発生には飲酒や喫煙が関与することも明らかになっています¹⁾。 また世界保健機関 (WHO) も飲酒、 喫煙は頭頸部の扁平上皮癌の明らかな発癌因子と認定しています。 そこで日本食道学会では、 飲酒による食道癌リスクを訴えるポスターを作成しました。 こうした活動を通じて、 多くの方々に食道癌の正しい情報が広がっていくように努めています。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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