海外ジャーナルクラブ
4ヶ月前
Schramらは、 NRG1融合遺伝子陽性の固形癌患者を対象に、 抗HER2/HER3二重特異性抗体zenocutuzumabの有効性および安全性を第Ⅱ相臨床試験で検討した。 その結果、 zenocutuzumabはニューレグリン1 (NRG1) 融合遺伝子陽性固形癌、 特に非小細胞肺癌と膵臓癌に有効であり、 有害事象は概ね軽度であったことが明らかになった。 試験結果はNEJM誌に発表された。
Efficacy of Zenocutuzumab in NRG1 Fusion-Positive Cancer. N Engl J Med. 2025 Feb 6;392(6):566-576. PMID: 39908431.
zenocutuzumabはファーストインクラスのヒト化完全長抗体です。 「ファーストインクラス」 とは、 同じ機序の医薬品の中で市場に最初に登場した医薬品を指します。
NRG1融合遺伝子は、 複数の固形癌で反復性の癌ドライバー遺伝子として知られている。 NRG1はヒト上皮増殖因子受容体3 (HER3) に結合し、 HER2とのヘテロ二量体を形成し、 下流の成長・増殖経路を活性化する。
HER2とHER3を標的とする二重特異性抗体zenocutuzumabのNRG1融合遺伝子陽性固形癌に対する有効性と安全性は明らかになっていない。
第Ⅱ相臨床試験を実施し、 進行性のNRG1融合遺伝子陽性固形癌患者にzenocutuzumab 750 mgを2週間ごとに静脈内投与した。
主要評価項目は治験担当医師が判定した全奏効 (完全奏効または部分奏効)、 副次評価項目は奏効期間、 無増悪生存、 安全性などとした。
計204例 (計12の癌種) が登録・治療を受けた。 測定可能な病変があり、 データカットオフ日の24週以上前に登録した158例の奏効率は30% (95%CI 23-37%) であった。 奏効期間の中央値は11.1ヵ月 (95%CI 7.4-12.9ヵ月) であり、 データカットオフ時点で患者の19%が奏効を維持していた。
全奏効率は、 非小細胞肺癌では29% (27/93例、 95%CI 20-39%)、 膵臓癌では42% (15/36例、 95%CI 25-59%) など、 複数の癌種で確認された。
なお、 無増悪生存期間の中央値は6.8ヵ月 (95%CI 5.5-9.1ヵ月) だった。
有害事象の発現は、 主にグレード1または2だった。 治験担当医師がzenocutuzumabに関連すると判断した有害事象で特に頻度が高かったのは下痢 (18%)、 倦怠感 (12%)、 悪心 (11%) などであった。
また、 14%に注入関連反応*が認められ、 1例が治療関連有害事象により治療を中止した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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