【ACHILLES/TORG1834】sensitizing uncommon EGFR陽性未治療NSCLCでアファチニブが著効
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HOKUTO編集部

7ヶ月前

【ACHILLES/TORG1834】sensitizing uncommon EGFR陽性未治療NSCLCでアファチニブが著効

【ACHILLES/TORG1834】sensitizing uncommon EGFR陽性未治療NSCLCでアファチニブが著効
 「sensitizing uncommon」 と定義されたEGFR遺伝子変異が陽性の未治療非扁平上皮NSCLCに対して、 第二世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬 (EGFR-TKI) アファチニブの有効性および安全性を標準化学療法を対照群として検証した第Ⅲ相無作為化比較試験ACHILLES/TORG1834の結果から、 増悪リスクが58%と大幅に低減したことが示された。 新潟県立がんセンター新潟病院内科部長の三浦理氏が発表した。 

背景

EGFR変異の多様性が明らかに

近年の遺伝子変異の検出力の進歩により、 EGFR遺伝子変異 (以下、 EGFR変異) の多様性が明らかになってきた。 そこで同氏らは、 EGFR変異において、 主なサブタイプであるexon 19欠失変異 (Exon19del) / exon 21のL858R点突然変異 (L858R) 以外のいわゆるuncommonなEGFR変異のうち、 第一、 第二世代EGFR-TKIの耐性変異として知られるde-novo T790M、 exon 20挿入変異以外の変異を 「sensitizing uncommon EGFR変異」 と分類した。 sensitizing uncommon変異は、 これまでuncommon EGFR変異とされていたもののうち、 83.15%を占めることがこれまでに報告されている (Semin Cancer Biol 2020: 61: 167-179) 。

sensitizing uncommon 変異陽性の1次治療を検証した第Ⅲ相としては初

このようなsensitizing uncommon EGFR変異のNSCLCの集団を対象として、 1次治療EGFR-TKIの有用性を検証した第Ⅲ相ランダム化比較試験はない。

第二世代EGFR-TKIアファチニブは幅広いEGFR遺伝子変異に有効性を有しており、 前向き試験の統合解析やレトロスペクティブ試験で有効性が示唆されている。 今回同氏らは、 同集団を対象に、 アファチニブの有効性を検証するための第Ⅲ相無作為化比較試験ACHILLES/TORG1834を実施し、 報告した。

研究デザイン

対象

局所進行または転移性の非扁平上皮NSCLCで以下に当てはまる患者

  1. 20歳以上
  2. 全身状態 (WHO PS) が0/1
  3. sensitizing uncommon変異 (exon 20挿入変異およびde-novo T790M変異以外) 
  4. 全身療法およびEGFR-TKIが未治療
  5. 無症候性脳転移 (CNS) 症例は登録可能

などの適格基準を満たした患者

方法

109例を以下の2群に2:1で割り付けた。

病勢進行 (PD) を認めるまで治療が継続された。
  • アファチニブ群 (73例)
30mgまたは40mg (高齢者または有害事象に懸念がある状態の患者ではランダム化前に30mgの投与開始量が選択できた)
  • プラチナ製剤+ペメトレキセド (Chemo) 群 (36例)
シスプラチン (75mg/m²) またはカルボプラチン (AUC 5または6) とペメトレキセド (500mg/m²) による併用療法後、 ペメトレキセドによる維持療法を3週間ごとに投与

評価項目

主要評価項目担当医の評価による無増悪生存期間 (PFS)

副次評価項目安全性、 客観的奏効割合 (ORR) 、 病勢制御率 (DCR) 、 OS、 治療の失敗までの期間 (TTF) 

研究結果

患者背景 (アファチニブ群、 Chemo群) 

両群で大きな差はみられなかった。

  • 年齢中央値 (71.0歳、 66.5歳)
  • 男性 (43.8%、 44.4%)
  • 非喫煙率 (52.1%、 36.2%)
  • Ⅲ~Ⅳ期/再発 (75.3% / 24.7%、 80.6% / 19.4%)
  • EGFR変異の状態は単一 (single) / 複合 (compound)  (68.5% / 31.5%、 69.4% / 30.6%)
  • CNS転移あり (31.5%、 30.6%)
  • アファチニブの開始用量30mg (50.7%、 52.8%)

EGFR変異サブタイプの内訳

  • 単一が68.8% (G719X:39.4%、 L861Q:18.3%)
  • 複合 (uncommon/uncommon:22.0%、 common/uncommon:9.2%)

担当医評価によるPFS中央値

  • アファチニブ群:10.6ヵ月
  • Chemo群:5.7ヵ月
2023年2月28日をカットオフ日とする追跡期間中央値:12.5ヵ月 (範囲0-43.5ヵ月) 
HR 0.422  (95%CI 0.256-0.694)、 p=0.0007
有効性の境界値p=0.0304

主要評価項目であるPFSは事前設定された有効性の境界値を下回り、 かつ70%以上のイベントが観察されていることから、 効果安全性評価委員会から早期公表、 試験早期中止の勧告がなされ、 本試験は主要評価項目を満たしたことが確認された。 

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(ESMO 2023発表データを基に編集部作成)

PFSのサブグループ解析

いずれのサブグループにおいても、 アファチニブ群のChemo群に対する優位性が一貫して認められた。

ORR、 DCR

  • アファチニブ群:61.4% (43例) 、 82.9% (58例) 
CR 2例、 PR 41例、 SD 15例
  • Chemo群:47.1% (16例) 、 82.4% (28例)
CR 0例、 PR 16例、 SD 12例

有害事象:AE (全グレード、 ≧Grade3)

  • アファチニブ群:97.3%、 43.8%
  • Chemo群:91.4%、 37.1%

アファチニブ群で多く認められた有害事象は、 下痢 (82.2%、 21.9%) 、 爪囲炎 (58.9%、 6.8%)、 皮疹 (58.9%、 1.4%) 、 粘膜炎 (58.9%、 8.2%)、  食欲不振 (23.3%、 6.8%) 、 悪心 (23.3%、 4.1%) などで新たな有害事象は認められなかった。

三浦氏らの結論

同試験により、 sensitizing uncommon EGFR変異陽性の未治療非扁平上皮NSCLCに対して、 アファチニブは標準治療であることが確立された。 OSの成績や詳細な変異別の奏効、 後治療のデータについては今後報告予定である。

三浦氏のコメント

みなし標準からエビデンス確立へ

ACHILLES/TORG1834試験の対象はまれであることから、これまで前向き第Ⅱ相試験や後ろ向き研究でみなし標準としてアファチニブ、 オシメルチニブが実地臨床では使用されてきました。 今回、 日本の8つの臨床研究グループの協力を得て、 第Ⅲ相試験を実施することができ、 1つのエビデンスの確立をすることが出来ました。 結果はある程度予想の範囲内ではあり、 世界からの評価が心配でしたが、 会場では世界中の先生から ”Congratulation !!” と声をかけられ、 ほっとしています。 この場を借りて関係者の皆様に御礼申し上げます。

減量による対応やオシメルチニブ選択の考慮も

本試験により、 sensitizing uncommon EGFR変異陽性肺腺癌にはアファチニブが標準治療に位置付けられると考えています。 もちろん、 毒性のマネジメントがやや大変な薬剤ですので、 減量による対応や、 症例によってはオシメルチニブも重要な選択肢と考えています。

Common EGFR遺伝子変異に対してはMARIPOSAレジメンやFLAURA2レジメンが報告され、 さらなる進歩が期待されています。 Uncommon変異に対する検討も今後さらに進むことを期待しています。


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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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