次世代の臨床試験を育む現場から ― WJOG Boot Camp チューター参加記
著者

西日本がん研究機構(WJOG)

1ヶ月前

次世代の臨床試験を育む現場から ― WJOG Boot Camp チューター参加記

次世代の臨床試験を育む現場から ― WJOG Boot Camp チューター参加記
合宿を終えて ~呼吸器グループ参加者メンバー~
2025年8月22~24日に西日本がん研究機構 (WJOG) が主催する若手医師育成プログラムである 「WJOG Boot Camp」 にジュニアチューターとして、 参加者をサポートする立場で参加してきました。 全国から呼吸器・消化器・乳腺腫瘍を専門とする若手医師が集い、 熱い議論を交わす本研修は、 未来の臨床試験を創造するための活気あふれる場でした。 本稿では、 私が現地で体感したこのプログラムの魅力をチューターの視点からご報告します。

執筆者

次世代の臨床試験を育む現場から ― WJOG Boot Camp チューター参加記
聖路加国際病院、 国立がん研究センター中央病院などを経て、 2024年7月より現職。 日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医。 おもな受賞 : 2024年度 日本肺癌学会 若手奨励賞、 2025年 WJOG Boot Camp Bestチューター賞、 世界肺癌学会 Early Career Education Award。

熱気とアイデアが交錯する 「Boot Camp」 とは

かつての異名は「虎の穴」

かつて 「虎の穴」 という名で知られた本研修は、 若手臨床腫瘍医に対する臨床試験立案・実施の教育と臨床腫瘍分野におけるオピニオンリーダーの養成を目的として2010年から実施されている研修です。

この研修は単なる座学の場ではなく、 若手医師が臓器別に4人からなるチームを編成し、 2泊3日の合宿形式で臨床研究プロトコールの作成に挑む実践的なプログラムで、 各チームには、 各領域の第一線で活躍するシニアチューターや本研修の卒業生であるジュニアチューターに統計家の先生も加わり、 アイデアの創出から最終プレゼンテーションまでを支援してくれます。

5ヵ月にわたる実践的プログラム

次世代の臨床試験を育む現場から ― WJOG Boot Camp チューター参加記
ダーツで発表の順番が決まる

なお、 研修は合宿のみではなく、 4月にある集合レクチャーの後から8月の合宿までの約5ヵ月間に渡ります。 日々忙しい臨床業務の合間を縫って定期ミーティングを行い、 それぞれが持ち寄ったアイディアを元に最終的に各グループで一つの試験コンセプトに練り上げていきます。

5ヵ月もかければ誰も文句のつけようのない素晴らしいコンセプトができるのではないかとお感じの読者もいるかもしれませんが、 合宿の際には他クループ (あるいは自問自答) からの本質を突く厳しい指摘などを受け、 合宿中にコンセプトが全く変わったものになることも少なくはありません。

臨床疑問を価値ある研究アイデアへ

チームやチューターとの対話でアイデアを磨き上げる

Boot Campでは参加者がクリニカルクエスチョンを持ち寄り、 磨き上げるプロセスを徹底して学ぶことができます。 チームやチューターとの対話を重ねることで、 漠然としたアイデアが、 論理的で実現可能性の高い研究計画へと磨き上げられていく過程には、 目を見張るものがあります。

次世代の臨床試験を育む現場から ― WJOG Boot Camp チューター参加記
プレゼン中の様子 (呼吸器グループ)

FINER基準と“Interesting”な発想

Boot Campでは、 第III相試験の提案は禁止されています。 これは試験の立案が比較的安易になりがちなためです。 また、 単に新規薬剤を組み合わせるのではなく、 「なぜ今、 この研究が必要なのか」 という臨床的意義を深く追求することが重要です。 参加者はFINER (Feasible = 実施可能性はあるか; Interesting = 科学的に興味深いか; Novel = 新しいか; Ethical = 倫理的に問題ないか; Relevant = 妥当性があるか) に沿って試験コンセプトを考えて考えていきますが、 特にBoot Campでは自由な発想を元に生まれた”Interesting” な試験案が多く提案されるため、 自分の専門領域でなくとも議論が活発化します。

試験の魅力をどう伝えるか?

段階的に深まる討論、 計4回のプレゼンで問われる 「伝える力」

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プレゼン中の様子 (消化器グループ)

Boot Campでは自分の意見を述べることも多いため、 言語化能力が養われます。 研修のクライマックスとなるのが、 練り上げたプロトコールを発表し、 参加者全員で討議するプレゼンテーションです。 合宿3日間の中でプレゼンテーション機会は計4回あり、 少しずつ発表時間と討論の時間が長くなっていくのが特徴です (1回目 : 発表5分、 討論10分、 2回目 : 発表10分、 討論20分、 3回目 : 発表15分、 討論45分、 4回目 : 発表20分、 討論50分)。

「聞く力」 と 「問う力」、 双方向の議論が思考力を高める

どれほど優れた研究計画であっても、 その価値を他者に的確に伝えられなければ実現には至りません。 特に、 本研修で自分たちのプレゼンテーションを聞くのは自分たちの専門領域について必ずしも詳しくない他臓器グループの医師です。 限られた時間の中で、 研究の背景、 目的、 デザインを論理的に、 そして熱意を持って伝える力が問われ、 これは自身が今後別の場面で臨床試験を提案する際にも間違いなく必要なスキルであると思います。

また、 プレゼンテーションに続く質疑応答でも参加者の能力が問われます。 質問の意図を正確に読み取り、 的確に回答する能力、 時には厳しい指摘を真摯に受け止め、 計画をさらに洗練させるための糧とする柔軟性が試されます。 質問する側もまた、 いかに建設的かつ本質的な問いを投げかけられるかが求められます。 この双方向の議論は、 参加者全員の論理的思考力と対話能力を飛躍的に高め、 自身にはなかった視点を得ることができると思います。

次世代の臨床試験を育む現場から ― WJOG Boot Camp チューター参加記
ディスカッション中の一コマ

がんの臨床試験に興味がある若手医師へのメッセージ

臨床試験の立案の経験が少ない若手の時期に、 色々な意見を聞きながら試験を考えていくことができる本研修のような機会は非常に貴重だと思います。 臨床試験の立案をしたことがない、 あるいは立案のプロセスがまだ分からない若手の先生にこそ参加してほしいプログラムです。

また、 WJOG Boot Campは臨床研究の手法を学ぶためだけの研修ではありません。 未来のがんの臨床研究を担うであろう、 同じ志を持つ、 専門領域の垣根を超えた仲間やメンター出会い・繋がることができ、 それだけでも参加する価値があります。 この記事が、 次代を担う若手医師の皆様が本研修へ挑戦する一助となれば幸いです。

いつか合宿所で直接お会いする日を楽しみにしています!

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参加者全員での集合写真

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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