Ahnらは, 多枝冠動脈疾患患者を対象に, エベロリムス溶出性ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション (PCI) と冠動脈バイパス術 (CABG) の長期的転帰を多施設共同無作為化比較試験で検討 (BEST試験 ) 。その結果, 主要有害心イベント,安全性複合エンドポイント,全死亡の発生率に, PCI・CABG間の有意差はなかった。本研究は, Circulation誌において発表された。
📘原著論文
Everolimus-Eluting Stents or Bypass Surgery for Multivessel Coronary Artery Disease: Extended Follow-up Outcomes of Multicenter Randomized Controlled BEST Trial. Circulation. 2022 Sep 19. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.122.062188.PMID: 36121700
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
本研究は2015年にNEJMに報告されたBEST trialの長期予後 (10年以上の追跡) 結果です。主要評価項目を死亡, MI, 再血行再建の3つのcomposite outcome(複合アウトカム) にしている点は本研究の大きなlimitationです。
背景
多枝冠動脈疾患患者において,エベロリムス溶出性ステントを用いたPCIとCABGの長期比較成績は限定的である。
研究デザイン
- 対象:血管造影上で多枝冠動脈疾患を有する患者:1776名
- 以下の2群に無作為に割り付け。
- PCI群:438名
- CABG群:442名
- 主要評価項目:全死因死亡,心筋梗塞 (MI) ,標的病変再血行再建術 (TVR) の複合。
研究結果
- 追跡期間中央値11.8年 (四分位範囲10.6~12.5年,最大13.7年)
- 主要評価項目の発生率
- PCI群:34.5% (151名)
- CABG群:30.3% (134名)
HR 1.18, 95% CI 0.88-1.56, P=0.26
- 安全性複合評価項目 (死亡,心筋梗塞,脳卒中) と全死因死亡の発生率は, PCI群とCABG群の間に有意差はなかった。
- 安全性複合評価項目の発生率
- PCI群:28.8%
- CABG群:27.1%
HR 1.07, 95%CI 0.75-1.53, P=0.70
- 全死因死亡
- PCI群:20.5%
- CABG群:19.9%
HR 1.04, 95%CI 0.65-1.67, P=0.86
- 自然発症のMIとあらゆる再血行再建の割合はPCI群の方が高かった。
- 自然発症のMI
- PCI群:7.1%
- CABG群:3.8%
HR 1.86;95% CI 1.06-3.27;P=0.031
- 再血行再建
- PCI群:22.6%
- CABG群:12.7%
HR 1.92, 95%CI 1.58-2.32, P<0.001
結論
多枝冠動脈疾患患者において,延長追跡中の主要有害心イベント,安全性複合エンドポイント,全死亡の発生率にPCIとCABGの間に有意差はなかった。