トラスツズマブ エムタンシン (T-DM1) 投与歴のある、 HER2陽性の切除不能または転移性乳癌患者において、 抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd) 投与の効果を検証した単群コホートの第Ⅱ相試験DESTINY-Breast01の結果より、 高い奏効率 (ORR) が示された。
原著論文
▼中間解析結果
Trastuzumab Deruxtecan in Previously Treated HER2-Positive Breast Cancer. N Engl J Med. 2020 Feb 13;382(7):610-621. PMID: 31825192
▼追跡結果
Abstract PD3-06: Updated results from DESTINY-breast01, a phase 2 trial of trastuzumab deruxtecan (T-DXd ) in HER2 positive metastatic breast cancer.*
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DESTINY-Breast01試験の概要
対象
T-DM1投与歴のある、 HER2陽性の切除不能または転移性乳癌患者
方法
パート1 (薬物動態ステージ)
65例をT-DXdの異なる用量である以下の3群に1:1:1で割り付けた。
- 5.4mg/kg群 (22例)
- 6.4mg/kg群 (22例)
- 7.4mg/kg群 (21例)
得られた薬物動態プロファイルより、 用量設定ステージでは5.4mg/kgと6.4mg/kgが選択された。
パート1 (用量設定ステージ)
新規登録患者54例をT-DXdの2つの用量群に1:1で割り付けた。
- 5.4mg/kg群 (28例)
- 6.4mg/kg群 (26例)
安全性と有効性のバランスに基づき、 5.4mg/kgの投与量が推奨された。
パート2
T-DXd 5.4mg/kgを投与された184例 (パート1の患者を含む) における有効性と安全性を評価
評価項目
パート2
- 主要評価項目:ORR
- 副次評価項目:奏効期間、 無増悪生存期間 (PFS) 、 全生存期間 (OS) 、 病勢コントロール率、 臨床的有用率、 安全性
DESTINY-Breast01試験の結果
患者背景
- 年齢中央値は55歳、 追跡期間の中央値は20.5ヵ月
- 97人 (52.7%) がホルモン受容体陽性の腫瘍であった。
ORR
61.4%
奏効期間 (中央値)
20.8ヵ月
(95%CI 15.0ヵ月-NE)
PFS
19.4ヵ月
(95%CI 14.1ヵ月-NE)
OS率 (6ヵ月時、 12ヵ月時、 18ヵ月時)
93.9%、 85%、 74%
病勢コントロール率
97.3%
(95%CI 93.8-99.1%)
臨床的有用率
76.1%
(95%CI 69.3-82.1%)
有害事象 (AE)
- Grade3以上の治療関連AEの割合は、 61.4%であった。
- AEにより投与を中断した患者は65例 (35.3%) 、 減量した患者は43例 (23.4%) であった。
- T-DXd投与に関連した間質性肺疾患が25例 (13.6%) に認められたが、 主にGrade1-2であり、 Grade3は1例、 Grade4の事象を認めた患者はいなかった。
著者らの結論
- T-DM1投与歴のある、 HER2陽性の切除不能または転移性乳癌患者において、 T-DXd投与は高い奏効率を示すことが示された。
- T-DM1は間質性肺疾患の発症リスクと関連しており、 肺症状への注意と慎重な経過観察が必要とされる。