亀田総合病院
15日前
呼吸器感染症領域で注目度の高い論文を毎月3つ紹介するシリーズです。 2025年1月に注目度が高かった呼吸器感染症関連の論文を3つご紹介します。
J Infect Dis. 2024 Dec 24: jiae639.
市中肺炎 (CAP) の治療において、 βラクタム系抗菌薬へのマクロライド系抗菌薬追加の有効性は長年議論されています。 2024年のACCESS試験¹⁾では、 全身性炎症反応を伴うCAPにおいてマクロライド追加が早期臨床反応を改善する可能性が示されました。 今回は英国の大規模なリアルワールドデータからの報告です。
これらの結果は、 肺炎の重症度による層別解析や欠損データの補完による感度分析でも一貫していました。 集団レベルでは、 マクロライド系抗菌薬の追加はCAP患者の臨床転帰の改善と関連しませんでした。 CAP治療におけるβラクタム系抗菌薬へのマクロライド系抗菌薬の併用については、 有害事象や薬剤耐性のリスクとのバランスを考慮して判断する必要があります。
今回、 英国のリアルワールドデータを用いた解析により、 マクロライド系抗菌薬の追加は30日死亡率や入院期間に有意な改善をもたらさないことが示されました。 このテーマは、 長年議論されており、 ACCESS試験の発表後は、 マクロライド系抗菌薬追加を支持する論調が強まっている印象ですが、 今回のリアルワールドデータでは、 入院患者に対するルーチンでのマクロライド系抗菌薬追加を支持しない結果が出ております。 私の現在論文投稿中の研究でも、 同様の結果が出ております。 重症例にマクロライド系抗菌薬を追加することに関しては多くの国際ガイドラインも支持しておりますが、 全ての入院症例に対してマクロライド系抗菌薬の併用が必要かについては、 今後も議論が続いていくと考えられます。
Clin Infect Dis. 2024 Nov 11: ciae550.
米国CDCは60歳以上の成人や併存疾患を有する高齢者にRSウイルス (RSV) ワクチンを推奨していますが、 60歳未満の高リスク成人における有効性は不明でした。 本研究では、 ファイザー社のRSVpreFワクチンの免疫原性と安全性が評価されました。
RSVpreFは良好な忍容性を示し、 安全性の懸念はなく、 既に有効性が示されている60歳以上の集団との免疫ブリッジングにより、 RSV重症化リスクを有する18-59歳における有効性が示唆され、 この集団でのRSV関連疾患予防における使用が支持されました。
高齢者を対象としたRSVワクチンの有効性は既に示されていましたが、 本研究では18-59歳の高リスク患者においても、 安全性と免疫原性が確認されました。 中和抗体価をもとにワクチンの有効性を推定する免疫ブリッジングの考え方に基づき、 18-59歳のハイリスク集団においてもRSVワクチン (RSVpreF) の有効性が示されたと考えられます。 慢性疾患や免疫不全を有する若年成人のRSV感染症予防における新たな選択肢として期待されます。
Eur Respir J. 2024 Dec 12: 2401574.
国際ガイドラインでは、 年3回以上の増悪を認める気管支拡張症患者にマクロライド維持療法 (MMT) を推奨しています。 MMTが増悪を減少させることは知られていますが、 心血管イベントに及ぼす影響は明らかになっていませんでした。
気管支拡張症患者に対するMMT投与は、 重篤な不整脈関連有害事象のリスク上昇を示すことなく、 MACEリスクの有意な低下と関連していました。
気管支拡張症患者においてMMTが増悪を抑制することは知られていましたが、 心血管系への影響については十分な検討がありませんでした。 本研究では香港の大規模コホートを用いて、 MMTがMACEを32%低下させることを示しました。 さらに不整脈リスクの上昇も認めず、 心血管系の安全性も確認されています。 これらの知見は、 気管支拡張症患者に対するMMTが増悪予防だけでなく、 心血管保護効果も有する可能性を示唆しました。 今後、 前向き臨床試験によるさらなる検証が望まれます。
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一言 : 当科では教育および人材交流のために、 日本全国から後期研修医・スタッフ (呼吸器専門医取得後の医師) を募集しています。 ぜひ一度見学に来て下さい。
連絡先 : 主任部長 中島啓
メール : kei.7.nakashima@gmail.com
中島啓 X/Twitter : https://twitter.com/keinakashima1
亀田総合病院呼吸器内科 Instagram : https://www.instagram.com/kameda.pulmonary.m/
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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